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「マンジャロは本当に危険? メディアの誇張とダイエットの新たな選択肢」

[2025.06.01]

最近、診療業務や論文執筆に追われ、更新が滞っておりました。本日は、昨今話題となっているマンジャロについて、引き続き取り上げたいと思います。個人的な見解が多く含まれる点、ご容赦ください。

 

 

最近、メディアでマンジャロが取り上げられる機会が増えています。若年者や痩せ型の方への注意喚起は理解できるものの、マンジャロを過度に危険視する偏った報道には疑問を感じます。吐き気や急性膵炎などの副作用は、他の薬剤でも見られるものであり、メリットとデメリットを公平に伝えることで、正しい理解が得られると考えます。 

 

メディアのあり方が問われる時代になりつつあると感じますが、この点はまた別の機会に考察したいと思います。

 

 

では、ダイエットにおけるマンジャロの位置づけをどう捉えるべきでしょうか。BMIが18.5未満の方には使用を推奨できませんが、食事や運動療法で体重減少が見られない場合、私はこの薬剤に高い有効性が期待できると考えます。

 

メディアでは、マンジャロに対して「非常に危険」「使用すると後悔する」などと、脅しとも取れる報道が目立ちます。過去にも、循環器領域の薬剤が週刊誌などで批判される例を多く見てきました。ワクチンの副反応問題を経験しており、その心情が理解できますが、多くの場合はそれらの薬剤を投与することのメリットが大きく上回ります。しかし、こうしたメリットに触れず、一方的に否定する報道が散見されます。

 

医師は常に批判の対象となり得る立場にあり、命を預かる責任を負います。医療機関を受診するとすぐに薬を処方され、金儲けをしていると思われることもありますが、確かに否定できない面もあります。ガイドラインやデータ、臨床経験に基づき、最善の選択肢を提供することが医師の務めです。ガイドラインを無視して治療を怠れば、重大な疾患や訴訟リスクにつながりかねません。一方、患者さんの希望がないのに治療を押し付けるのは本末転倒で、信頼関係を損ない、良い結果につながらないこともあります。コミュニケーションは欠かせません。患者さんの来院理由や思いを汲み取り、同じ方向性で疾患に向き合うことがとても重要です。特に肥満症では、「見た目が気になる」「痩せたい」という気持ちは誰しも同じですが、生活習慣病の予防という大きな課題がその先にあることを強く感じます。

 

 

当院では、ダイエット外来の患者さんと可能な限り十分に話し合い、処方することを心がけています。糖尿病でない場合、マンジャロを長期的に使い続けることはありません。投与期間中に食事バランスや運動習慣を定着させることが、体重維持に大きく影響すると考えます。単に薬を処方して終わりではなく、患者さんの生活習慣改善を支援することが医師の役目です。

 

糖尿病治療において、マンジャロの効果は顕著です。多剤併用でも血糖コントロールが困難だった患者さんが、マンジャロ開始後にHbA1cが正常化したケースを多く経験しました。糖尿病治療に大きな可能性をもたらす薬剤だと考えます。

 

一方、非糖尿病患者への使用には慎重な検討が必要です。しかし、マンジャロ(またはゼップバウンド)の作用機序を考慮すると、重大な弊害が生じる可能性は低いと考えます。GLP-1およびGIPレセプターを刺激し、グルコース依存的にインスリン分泌を促すため、血糖値が正常範囲内では過剰なインスリン分泌を誘発せず、低血糖リスクは極めて低いとされています。

 

 

肥満患者ではインスリン抵抗性があり、食後血糖が高くなる傾向が見られます。マンジャロは胃腸の動きを遅らせ、食欲を抑制し、体重を減少させることで、インスリン抵抗性の改善や血糖の安定化が期待できます。メディアで報じられる膵炎リスクの高さは疑問であり、投与初期や増量時の嘔気や便秘などの不調を管理しながら継続すれば、弊害は限定的と考えます。薬の中止後のリバウンドに注意し、食事や運動を継続することで、インスリン抵抗性の悪化を防ぎ、将来的な糖尿病予防も期待できます。薬の適応には個人差がありますが、メリットとデメリットを冷静に比較し、恐怖を煽る報道の妥当性を問う必要があります。

 

痩せ型の方が受診された場合、十分な説明が不可欠です。過度な体重減少や栄養バランスの偏りは、骨密度の低下や骨形成の抑制を招き、将来的な骨折リスクを高めます。特に女性では、エストロゲン分泌の減少により、月経不順や閉経後の骨粗鬆症リスクが増加します。「痩せたい」「モデルのような体型を目指したい」という気持ちは理解できますが、こうしたリスクを十分にご理解いただくことが重要です。後々後悔することになれば、それは悲しいことです。

 

 

マンジャロ使用中は食欲抑制により摂取カロリーが減りますが、中止後のリバウンドが懸念されます。これはダイエット全般の課題です。体重維持には、投与期間中に食事バランスや運動習慣を定着させる必要があります。受診者やダイエット中の同僚の話を聞くと、体重が減らない背景には理由があることがわかります。マンジャロで食欲が抑えられると、過剰なカロリー摂取が可視化され、食事量や内容を見直すきっかけになります。これが長期的な体重維持を左右します。体重減少は腰や膝の負担を軽減し、運動への意欲も高めます。こうした生活習慣の変化を通じて、持続的なダイエットを成功させることが重要です。成功体験は大きな力となり、「どうすれば痩せられるか」の気づきを与える点もマンジャロの利点の一つと考えます。

 

 

メディアのトピックは世間の関心を反映しますが、報道が必ずしも正確とは限りません。否定的な意見に偏る場合もあります。私自身も、薬剤の効果や安全性を常に検証し、長期的な追跡を行う必要があると感じています。

 

大切なのは、疑問を持ち、自分の頭で考えることです。薬や健康に関しても、無関心ではいられない時代です。判断を他人に委ねず、疑問があれば調べ、AIなどのツールも活用しながら、自分の健康を守る姿勢が求められます。医師として、患者さんと向き合い、最新の知見や技術を取り入れながら、より良い医療を提供し、社会に貢献したいと考えます。 

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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