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メディアに騙されてませんか?「ただのダイエット薬」と叩かれるマンジャロの本当の価値

[2025.12.07]

本日のテーマは、ブログで何度も取り上げてきたGLP-1ダイエット、特にチルゼパチド(マンジャロ)についてです。このダイエットの最大の目的は「減量そのもの」だけではなく、生活習慣病を源流から断ち、健康寿命を延伸することです。健康は日々の積み重ねでしか作れません。最適な生活習慣を身につけることは、その後の人生に大きな影響を与えます。

 

今日は、私の「ぼやき」も交えつつ、薬剤データ・実臨床での経験・循環器の先輩ドクターの実例などを織り交ぜてお話しします。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

 

 

 

なぜメディアでは叩かれるのか?

最大の理由は、やせ型の若年女性が美容目的で乱用していることへの警鐘でしょう。この点については私も同意します。

 

「一度試してみたい」という気持ちは分からなくもありませんが、適応や使い方を誤ると、体の不調をきたしやすくなります。基本的には安全な薬剤と言えますが、副作用について十分に説明を行い、体調の変化を来した際はすぐに相談ができるよう配慮するのが医療機関の責務だと思います。そのため、それが十分になされていない美容やオンライン診療での処方には大きな問題があると言わざるを得ません。その点に十分に留意した上で、慎重に経過をみながら使用するべき薬剤だと思います。

 

 

 

肥満症に対する有効性は否定できない

・ゼップバウンド:マンジャロと同じチルゼパチドで、肥満症として正式に承認 

・ウゴービ:セマグルチドで、こちらも肥満症適応あり 

 

これらは海外の大規模試験データを基に日本でも承認されており、糖尿病がなくても肥満症の方に対して明確な減量効果が認められています。したがって、適正な肥満症患者さんに対してGLP-1/GIP受容体作動薬を使用することを「悪」と決めつけるのは誤りであり、メディアの報道の仕方に偏りがあるとしか思えません。

 

もちろん否定的な医師もまだ多くおられますが、SGLT2阻害薬が当初「危ない薬」と叩かれながら、今では心不全・腎臓病の標準治療になっている歴史を振り返れば、今後の流れは自ずと見えてくると思います。

 

 

 

2型糖尿病におけるGLP-1受容体作動薬のエビデンス

GLP-1受容体作動薬にはいくつかの種類があります。各薬剤についてこれまでに発表されてきたデータをお示しします。

 

2016年 LEADER試験(リラグルチド:ビクトーザ)(New England Journal of Medicine;世界で最も権威ある医学誌、以下NEJMと表記)

→ プラセボと比較して心血管死・総死亡を有意に減少 

 

 

2016年 SUSTAIN-6試験(セマグルチド:リベルサス)(NEJM) 

→ プラセボと比較して主要心血管イベントは減少するが、心血管死・総死亡の減少は有意差なし 

 

 

これらの結果から、同じGLP-1受容体作動薬であっても必ずしも同様の恩恵をもたらさない可能性が示唆されました。

 

2021年 SURPASS-2試験 {チルゼパチド (マンジャロ) vs セマグルチド (リベルサス) } (NEJM) 

→ HbA1c・体重の両方ともチルゼパチド(マンジャロ)で有意に低下

 

HbA1cの変化 (チルゼパチドは容量依存性に効果が増します)

 

体重の変化 (チルゼパチドは容量依存性に減量効果が増します)

 

チルゼパチド (マンジャロ)の優位性について

チルゼパチド (マンジャロ)は、GLP-1受容体作動薬に加えて、GIP受容体作動薬の効果も持ち合わせる薬剤です。

 

下記の図のように、GLP-1作用はその濃度に応じて作用が異なります。生物学的レベルでは、インスリン分泌を促し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖値を低下させます。GLP-1濃度が上昇し薬理学的レベルに達すると、胃内容物の排出低下、さらに食欲低下作用により体重減少をもたらします。

 

 

GIP作用もまた、その濃度に応じて作用が異なります。生物学的レベルでは、インスリンの分泌を上昇させ、血糖値を低下させる一方で、肥満やインスリン抵抗性を誘導してしまいます。しかし薬理学的レベルまで濃度が上昇すると、肥満やインスリン抵抗性の軽減をもたらします。さらにグルカゴンの分泌も促進するようになります。グルカゴンは、肝臓や脂肪細胞において脂肪分解や熱産生を促してエネルギー消費を上昇させ、食欲抑制効果をもたらします。これらの作用により体重減少効果が期待されます。

 

この二つの作用を持つのはチルゼパチド (マンジャロ)のみです。以下にチルゼパチド (マンジャロ)のデータをお示しします。

 

2024年 JAMA Network Open

2型糖尿病患者の一次予防コホート研究(追跡期間約1年)

チルゼパチド (マンジャロ) vs. 他のGLP-1受容体作動薬

→ 全死亡・心血管死・心筋梗塞・脳卒中すべてでチルゼパチド群で有意に少ない

 

 

平均追跡期間はわずか1年弱ですが、これだけ結果に違いが出ることは衝撃です。

 

2025年にBMJに掲載された糖尿病患者に対する適切な治療ガイドにおいても、他のGLP-1受容体作動薬と比較して、全死亡、非致死性心筋梗塞、心不全入院、3-points MACE、腎機能悪化をより減少させることが示されています。さらにはSGLT2阻害薬を比較しても遜色ない、あるいはそれさえも凌駕するデータが示されています。チルゼパチド (マンジャロ)の適正使用下での効果は、もはや「絶大」と言わざるを得ません。

 

 

 

K先生の実例で見るチルゼパチド (マンジャロ)の効果について

K先生は、15年以上の付き合いのある循環器の先輩ドクターです。長年一緒に働く中で、ダイエットに挑む姿を幾度となく見てきましたが、減量とリバウンドを繰り返していました。そんな先輩からマンジャロを使用してみたいと強い要望があり、2025年3月から開始しました。

 

元々100kgを超える大柄な体格なので、当初はマンジャロの増量が必要だと考えていました。しかし2.5mgで開始後は食欲減退し、体重は右肩下がりでした。100kgを切る頃には、膝の負担も減り、かなり軽快に動けるようになりました。食事と運動を意識するようになり、2.5mgで継続し、半年後には20kg近い減量が得られました。

 

本人の強い希望で掲載します (着衣でも明確に分かる変化です)

 

投与開始前と半年後のInBodyデータをお示しします。体重、BMI、体脂肪率は大きく減少していますが、運動を頑張っていることもあり筋肉やタンパク質量の減少はわずかでした。

 

 

元々血液データは良いのですが、LDLコレステロール、中性脂肪はさらに低下し、HDLコレステロールはほぼ横ばいでした。

 

 

外来で「今まで食べ過ぎていたのがよく分かった」という言葉をよく耳にしますが、先輩も御多分に洩れずぼやいていました。「俺の食事量は多くない。そんなに食べてなんかない」ってあれだけ言っていたのに (笑)。

 

K先生の結果は、ゼップバウンド (チルゼパチド)を使用したSURMOUNT-1試験やSURMOUNT-J試験の結果と一致します。適切に使えば、肥満の方にこれほど大きな恩恵をもたらす薬は他にありません。

 

当院でも、 

・数ヶ月で血圧が下がり降圧薬を中止できた方 

・LDLコレステロールが正常化しスタチン開始を回避できた方 

を何人も見てきました。これらは従来の医療では極めて難しかったことです。「ダイエット薬」と片付けられがちですが、生活習慣病を根本から改善する力は驚異的です。

 

 

SGLT2阻害薬を凌駕する可能性

私は、SGLT2阻害薬の超高齢心不全における有用性について研究してきました。2024年にヨーロッパ心臓学会誌「ESC Heart Failure」に掲載された論文(The OASIS-HF study)は、SGLT2阻害薬が80歳以上の高齢患者で心不全による再入院の頻度を有意に低下させることを示したものですが、海外で引用されるケースが増えてきました。

 

Full text viewsは約1年で2,000を超えてます!Study名はロックバンド「Oasis」から拝借

 

当初は副作用を懸念されたSGLT2阻害薬も、今では心不全・腎臓病の標準治療です。GLP-1/GIP作動薬も同じ道をたどり、いや、それを超える可能性すらあります。特に肥満症に対する効果は計り知れません。副作用ばかりが取り沙汰されますが、正直「本当にすごい薬」です。副作用も使用する中で軽減することがほとんどで、問題となるケースこそ稀です。(SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体の比較はこちらを)

 

長期的な使用での安全性は担保されています。3年に渡り使用しても減量効果は保持されます。しかしダイエットで用いる場合は、どこかで卒業する時が来ます。その後にリバウンドするかしないかは、意識改革 (食事・運動への取り組み、つまり生活習慣の改善)にかかっています。マンジャロのサポートを受けながら、ダイエット期間中に食事量やバランスを改善していくことが最も大切です。運動習慣がつくなら、なお良しです。(リバウンドを防ぐコツについてはこちらを)

 

 

医師から「痩せなさい」と言われて痩せられるなら苦労しません。私自身、どうすれば健康的に減量できるか、日々の生活の中で実践しながら取り組んでいます。ただ漠然と薬を飲み、数値を下げるだけの医療が正しいと思いません。生活習慣病を源流から断ち、健康な体づくりをしていくことこそが、内科医の責務ではないでしょうか?

 

当院では、従来の内科診療とやや異なった視点でアプローチしています。健康診断でメタボリックシンドロームや生活習慣病を指摘された際は、是非当院までご相談ください。一人一人のお悩みに向き合いながら的確なアドバイスができるよう最善を尽くします。

 

修志会の一同が来院してくれました!一緒に地域医療を盛り上げていきたいです

 

修志会は、関東を中心に全国に17のクリニックを展開し、在宅医療を行なっている医療法人です。在籍医師数はなんと100人を超えます。西田理事長と服部専務は修道の同級生で、修志会の名も修道に由来しています。西田先生ですが、2025年のウォール・ストリートジャーナルの「Next Era Leaders」に選ばれました。

 

今年、修志会グループは地元広島に「ファミリークリニック広島中央」を開設しました。全国で在宅医療を展開されている視点で見ても、広島ではまだ在宅医療が十分に根付いていないのが現状だそうです。今後も密に連携しながら、広島の地域医療に貢献していきたいと考えています。当院でも在宅診療を行なっておりますので、何かご不明なことがありましたらお気軽にお尋ねください。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!

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