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保険適応のゼップバウンド:チルゼパチドが紡ぐ健康の新章

[2025.07.03]

投稿中の論文がmajor revisionとなり、追加の解析や査読への対応に追われていました。アメリカの権威ある学術誌ですので、アクセプトにこぎつけたいと願っております。

 

この数年、SGLT2阻害薬の高齢心不全患者への効果について研究してきました。SGLT2阻害薬は、糖尿病治療から始まり、心不全や腎臓病にも幅広い効果をもたらす優れた薬剤として知られています。現在では多くの医療機関で広く使用されていますが、ほんの5年前はまだその有効性に対して懐疑的な見方が多かったと記憶しています。この状況は、近年注目を集めているGLP-1受容体作動薬と似ているように感じます。私見ではありますが、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬を大きく超える可能性を秘めた薬剤になると期待しています。

 

本日は、肥満症に対する保険適応が認められたGLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド(チルゼパチド)」についてご紹介いたします。(後述しますが、ゼップバウンドは総合病院や大学病院などの教育研修施設でのみ処方可能なため、クリニックでの処方はできないのが現状です)

 

 

 

GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」の特徴

GLP-1受容体作動薬は、いずれも優れた効果を持つ薬剤ですが、その中でもチルゼパチド(商品名:マンジャロ、ゼップバウンド)は高い効果を発揮します。糖尿病治療の観点から見ても、従来の経口血糖降下薬や週1回の注射薬と比較して、HbA1cの低下作用は顕著です。しかし、チルゼパチドの魅力はそれだけではありません。この薬剤のもう一つの大きな特徴は、食欲抑制による顕著な減量効果です。

 

 

臨床試験が示すチルゼパチドの効果

マンジャロとゼップバウンドは商品名が異なりますが、同じチルセパチドで成分や規格は同一です。チルセパチドの有効性を示すデータはいくつかありますが、今回SURMOUNT試験をご紹介いたします。

 

  • SURMOUNT-1試験:肥満症患者における減量効果

SURMOUNT-1試験は、2型糖尿病を有さない成人肥満患者約2,500名を対象に、72週間(約1年半)にわたり週1回のチルゼパチドまたはプラセボ(偽薬)を投与した臨床試験です。結果、チルゼパチド投与群では用量依存的に体重減少効果 (5mg群で15%、10mg群で19〜20%、15mg群で21%)が確認されました。

 

一方、プラセボ群の平均体重減少率は1~3%にとどまり、チルゼパチドの優れた減量効果が明らかになりました。

SURMOUNT-1試験

 

  • SURMOUNT-2試験:2型糖尿病を有する肥満患者での効果

2型糖尿病を有する肥満患者を対象としたSURMOUNT-2試験では、最大投与量15mgでの体重減少率は約12%でした。2型糖尿病を有さない場合と比較すると効果はやや劣るものの、依然として顕著な減量効果が確認されています。

 

  • SURMOUNT-J試験:日本人患者での効果

日本人を対象としたSURMOUNT-J試験でも、チルゼパチドの優れた効果が示されました。72週後の体重減少率は、10mg群で約18%、15mg群で約23%でした。一方、プラセボ群では平均体重減少率が約2%にとどまり、ほとんど変化が見られませんでした。

 

SURMOUNT-J試験

 

減量だけではない、チルゼパチドの多面的な効果

体重減少はダイエットを希望される方にとって非常に喜ばしい結果ですが、内科医の視点では、メタボリックシンドロームに関連する生活習慣病の改善がとても重要です。SURMOUNT-J試験のサブ解析では、耐糖能異常(前糖尿病)の患者様の約90%で血糖値の正常化が確認されました。また、脂質異常症非アルコール性脂肪性肝疾患の改善も報告されています。さらに、血圧に関しては、収縮期血圧が11~12mmHg、拡張期血圧が6mmHg低下するなど、多岐にわたる健康上の恩恵が期待されます。

SURMOUNT-J試験のサブ解析

 

チルゼパチドは血圧も低下させます (SURMOUNT-2試験)

 

これらの結果から、チルゼパチドによる体重減少は、単なる減量にとどまらず、肥満に伴う生活習慣病の改善や疾患発症リスクの低減に大きく寄与する可能性があると考えています。私自身、この点に最も注目しております。

 

 

ゼップバウンドの保険適応について

日本におけるゼップバウンド(チルゼパチド)の保険適応には、以下の条件を満たす必要があります:

1) 対象患者

高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断があり、以下のいずれかに該当する患者

    - BMIが27kg/m²以上で、2つ以上の肥満関連健康障害*を有する

    - BMIが35kg/m²以上

 

*肥満関連健康障害:耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞・一過性脳虚血発作、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群、運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節・変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病

 

2) 適切な食事療法・運動療法に係る治療計画を作成し、本剤を投与する施設において当該計画に基づく治療を6ヵ月以上実施しても、十分な効果が得られない患者であること。また食事療法について、この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること。

 

3) 併存疾患の治療

- 高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病に対して、薬物療法を含む適切な治療が行われている患者

 

上記の条件のうち、1)に該当する患者さんは多くいらっしゃいますが、2)の要件のハードルが高いため、保険診療でのチルゼパチドの適応は限定的です。また、投与は教育研修施設(総合病院や大学病院)に限定されており、現時点ではクリニックでの保険診療は認められていません

 

 

 

上記の理由から、当院ではマンジャロ(チルゼパチド)の自由診療を行っております。ダイエットを希望される患者様一人ひとりのお悩みや目標に応じたきめ細やかな対応を心がけ、対面診療を基本としております。対面診療では、投与期間中の体調変化や薬剤の調整について直接ご相談いただけるため、オンライン診療にはないメリットがあると考えています。

 

マンジャロを用いたダイエットの目的は、単に体重を減らすことにとどまりません。生活習慣改善の指導は欠かせません。マンジャロのサポートを受けながら、食事量やバランスを整えていくことがとても大切です。治療終了後もリバウンドせずに健康的な体重を維持できるようサポートすることが、当院のダイエット外来の重要な役割であると考えております。

 

何かお困りの点ございましたら、当院までお気軽にご相談ください。

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