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心臓が弱っている人に必要なのは? ICDと CRT-Dの違い

[2025.11.16]

先日、両室ペーシング機能付き植込み型除細動器 (CRT-D)の植込みをお手伝いしました。カテーテルアブレーション治療には毎週入らせていただいておりますが、時々緊急カテーテルやデバイス植込みに関わると、勤務医の頃の感覚が蘇ります。指導医として立ち会うことが多いものの、優秀な後輩達の手技を見学しながら学ぶことは非常に充実感があります。

 

本日は、植込み型除細動器 (ICD) と 両室ペーシング機能付き植込み型除細動器 (CRT-D) についてご説明します。

 

 

植込み型除細動器 (ICD)とは

心臓は電気信号によって拍動し、脈を打ちます。通常のペースメーカーは、心臓の電気信号が不足している場合にそれを補う目的で植込まれます。一方、植込み型除細動器 (ICD:Implantable Cardioverter-Defibrillator) は、特殊なペースメーカーとして電気ショックを放ち、心臓に正常な拍動を取り戻させる機能を備えたデバイスです。

 

ICDは、本体(ジェネレーター)と2本の電線(リード線)で構成されます。右心房と右心室にそれぞれリード線を挿入しますが、右心室のリード線は「ショックリード」と呼ばれ、高エネルギーの電気ショックを発することができます。ジェネレーターは重量約70〜80g、厚み約1cmで、痩せた方では皮下で形状が確認できる場合があります。

 

Medtronic社のICD

 

ICDの適応

① 二次予防(Class I)

心室頻拍(VT)や心室細動(VF)による心停止蘇生後では、ICD植込みが強く推奨されます。心筋梗塞後、Brugada症候群、持続性心室頻拍による血行動態不安定例などが対象です。

 

② 一次予防(Class I / IIa)

不整脈リスクが高い患者に対し、発症前に予防的に植込むケースです。以下が主な適応です:

- 低心機能(LVEF ≤35%)を伴う心筋梗塞後

- 非虚血性心筋症、肥大型心筋症

- Brugada症候群(心停止既往または誘発性VTあり)

- 心室性不整脈性右室心筋症(ARVC)

 

一方、心機能が保たれている場合や、心筋梗塞直後(発症後40日以内など)は植込みの適応となりません。

 

心室頻拍 (VT)

 

心室細動 (VF)

 

ICDの主な機能

  1. 除細動機能

   高エネルギーショック(最大35J)でVT/VFを停止 

  1. 抗頻拍ペーシング(ATP)

   高速ペーシングでショックを回避しVTを停止 

  1. 徐脈ペーシング

   通常ペースメーカーと同様、徐脈時のバックアップ 

  1. モニタリング

   不整脈や心機能データを遠隔モニタリング

 

ICDショック作動時の心電図

 

段階的治療

  1. ATP → 2. 低エネルギーショック → 3. 高エネルギーショック

この順序で治療を行い、不適切なショックを最小限に抑えます。

 

ICDは「突然死を防ぐ保険」の役割を果たします。特にLVEF ≤35% または致死性不整脈の既往がある場合、植込みにより突然死リスクを低減できます。

 

 

両室ペーシング機能付き植込み型除細動器 (CRT-D)とは

拡張型心筋症や陳旧性心筋梗塞などにより心機能が高度に低下した重症心不全では、右心室と左心室の収縮タイミングにズレ(心室間非同期)が生じることがあります。このズレがポンプ機能低下の原因となる場合、心臓再同期療法(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy) によりタイミングを補正し、心機能を改善することが期待できます。

 

Medtronic社のCRT (リードは右心房、右心室、左心室の3本)

 

CRTは、右心室と左心室(冠静脈経由)にリードを留置し、両心室を同時に収縮させる特殊なペースメーカーです。 

- CRT-P:ペースメーカー機能のみ 

- CRT-D:右心室リードに除細動機能(ショック)を追加 

 

重症心不全では致死性不整脈を合併しやすいため、CRT植込みの多くはCRT-Dが選択されます。

 

左心室リードは冠静脈洞内に留置

 

CRTの適応

- NYHA機能分類 IIIまたはIV(※一部IIも適応あり) 

- 心電図QRS幅 ≥130ms(心室間での収縮タイミングのずれを反映、特に左脚ブロック型) 

- 左室駆出率(LVEF) ≤35%

 

CRT-Dでは、上記に加えてICDの適応条件を考慮します。

 

CRTは右心室と左心室のリード線のタイミングを合わせてることで心臓を同期

 

低心機能患者ではICDとCRT-Dのどちらが適切か?

2024年にNEJM掲載のRAFT試験の長期追跡結果 (Sapp JL, et al. N Engl J Med. 2024; 390: 212-220)をご紹介します。

 

対象

- LVEF ≤30% 

- QRS幅 ≥120ms 

- NYHAクラスIIまたはIIIの心不全患者 

- ICD群(530名) vs. CRT-D群(520名)

 

追跡期間

- 中央値:7.7年(IQR 3.9-12.8年) 

- 生存者追跡中央値:13.9年

 

結果

- 全死亡(累積): 

  ICD群 76.4%(405/530) vs. CRT-D群 71.2%(370/520) P=0.002 

- 複合エンドポイント(死亡、心移植、LVAD植込み): 

  ICD群 77.7% vs. CRT-D群 75.4%

 

 

結論

ICD は、致死性不整脈から命を守るために植込まれる除細動器です。一方、CRT-D は、低心機能の心不全患者さんで除細動機能が必要な場合に選択されます。

 

左室駆出率(LVEF)が低下し、QRS幅が広い患者さんでは、CRT-DはICD単独と比べて長期的な生命予後を改善する可能性があります。ただし、CRTには「レスポンダー(効果が高い)」と「ノンレスポンダー(効果が限定的)」が存在し、その差が予後に影響します。

 

 

デバイス選択は、主治医の判断や施設内協議により慎重に決定されます。私自身も長年、低心機能心不全患者のデバイス植込みや術後管理に携わってきました。 

ご不明な点やお悩みがあれば、ぜひ当院までご相談ください。

 

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