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肥満症の本当の怖さとは?「ただ太ってるだけ」じゃない、早期介入が命を守る理由

[2026.02.22]

突然ですが、「肥満」と「肥満症」は異なることをご存知でしょうか?かく言う私も勤務医時代はこの違いを十分に理解できていませんでした。本日は肥満症について詳しくお話ししたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

 

肥満とは?

肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、日本ではBMI ≧ 25 を肥満と判定します。単に「太っている状態」であり、それ自体に病的な意義はありません。しかし、肥満に伴って健康を脅かす合併症がすでに存在する場合、あるいは合併症を起こすリスクが高い場合に「肥満症」と診断されます。

 

 

肥満症とメタボリックシンドロームの違い

メタボリックシンドローム(別名:内臓脂肪症候群)は、内臓脂肪の蓄積が必須条件で、肥満の有無にかかわらず、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上を伴う場合に診断されます。

一方、肥満症はBMI ≧ 25 で、肥満が原因で健康障害がすでに起きているか、内臓脂肪蓄積により健康障害を起こす恐れが高い状態を指します。そのため早期介入が重要です。

肥満に起因・関連する主な健康障害(日本肥満学会ガイドライン2022より抜粋・一部表記調整):

  • 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
  • 月経異常・女性不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  • 運動器疾患(変形性関節症:膝・股関節・手指、変形性脊椎症)
  • 肥満関連腎臓病

 

 

肥満者数の変化

日本では成人男性の肥満割合が増加傾向にあり、特に40〜50代で高くなっています。小児肥満も増加中です。一方、女性は肥満の割合は変化ありませんが、加齢とともに肥満割合が増え、当院でも40〜50代女性の体重増加相談が多く、ホルモン変化などの女性特有の要因が大きく影響しています。

 

 

脂肪細胞は不要?

脂肪細胞はエネルギーの貯蔵・放出を担い、生体の恒常性維持に不可欠です。脂肪自体は生きるために必要なものですが、摂取エネルギーが消費を上回ると過剰蓄積につながります。このエネルギーバランスの乱れには、環境要因・遺伝的素因・ストレス・腸内環境などが複合的に関与します。

 

 

肥満の原因は自己責任だけではない

肥満や肥満症は、過食や運動不足が主因のため「自己責任」というレッテルを貼られがちですが、社会的環境やストレス、あるいは遺伝的素因 (ホルモンや腸内環境)も関わっています。同じ生活習慣でも体重や体型は個人差が大きいため、一方的な判断は避けるべきです。

 

日本人の肥満の特徴

日本人を含むアジア人は、欧米人に比べてBMIが高くない段階から内臓脂肪を蓄積しやすく、高血圧・脂質異常症・高血糖などの健康障害を起こしやすい傾向があります。

脂肪の過剰蓄積は慢性疾患の発症を促します。脂肪組織の肥大化は高血圧・耐糖能異常・脂質異常のほか、非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)や心血管疾患(CVD)などを引き起こし、量的増加は睡眠時無呼吸症候群や変形性関節症につながります。

 

 

皮下脂肪と内臓脂肪による健康障害

内臓脂肪蓄積は高血圧・脂質異常症・高血糖を介して動脈硬化リスクを高め、「ハイリスク肥満」と位置づけられています。一方、皮下脂肪蓄積は体重増加により骨格筋・関節への負担が増し、関節痛・月経異常・睡眠時無呼吸症候群を招きやすいです。

 

 

肥満症の診断

肥満症は原発性肥満と二次性肥満に大別されます。二次性肥満は原因疾患の治療が根本解決につながるため、精査が不可欠です。原発性肥満はさらに細分化され、診断の鍵は内臓脂肪蓄積の程度や健康障害の有無です。

 

肥満症診断ガイドラインフローチャート

 

食事療法・運動療法の有効性

肥満症治療の基本は食事療法・運動療法で、健康障害の改善が期待できます。DiRECT試験(BMI 27〜45 kg/m²、2型糖尿病を伴う肥満症患者対象)では、集中的な食事・運動介入により、24.2%の参加者が15 kg以上減量し、その86%で2型糖尿病の寛解(HbA1c <6.5%)を達成しました。

 

Lean ME, et al. Lancet. 2018;391(10120):541-551.

その他にも減量により、関節症の軽減や睡眠時無呼吸症候群を改善するデータもあり、さまざまな恩恵が期待できます。

 

肥満症治療薬の適応について

食事・運動・行動療法を十分に行っても減量が不十分な場合や、健康障害の改善が乏しい場合に薬物治療を検討します。現行ガイドラインでは複数回の通院(栄養指導含む)が必要で、初診から薬開始まで最低6ヶ月程度を要します。保険診療での薬物治療は主に基幹病院で行われ、クリニックでは難しいのが現状です。

 

 

肥満症治療における課題

ゼップバウンド(チルゼパチド、マンジャロと同一成分)やウゴービ(セマグルチド、オゼンピックと同一成分)などのGLP-1受容体作動薬(一部GIP/GLP-1デュアル作動薬)は減量に有効ですが、その効果に個人差があり、リバウンドも懸念されます。これらに対処するため、患者さんと医療者が同じ目標に向かって協力する必要があります。当院では自費診療となりますが、GLP-1受容体作動薬を用いた肥満症治療を行っています。

 

 

なぜ肥満症治療を行うのか?

大きく二つの意味があります。一つ目は「痩せたい」という患者さんの期待に応えることです。適正体重・BMIを維持したいという願いは誰もが持つものです。二つ目は健康障害の進行予防です。減量により血圧・血糖・脂質などの数値が改善し、生活習慣病の発症や関節痛・睡眠時無呼吸症候群を抑えられます。GLP-1受容体作動薬は、これまで難しかった減量目標や予防を現実的にサポートする強力なツールとなっています。

 

当院では、来院される方ひとりひとりの悩みに寄り添いながら、目標の達成を目指します。悩みは人それぞれです。どのようなことでも解決を目指してご提案ができますよう、日々努力を重ねてまいります。何か御座いましたら当院までお気軽にご相談下さい!

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