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若年者も要注意!高血圧の裏に潜む原因 〜二次性高血圧について〜

[2025.10.09]

高血圧症は、生活習慣病として広く知られ、定期健診で初めて指摘されることの多い疾患です。慢性的に血圧が高い状態が続くと、血管に常に強い負荷がかかり、その結果、血管がダメージを受け、動脈硬化を促進してしまいます。自覚症状が乏しいため見過ごされがちですが、放置してしまうと心血管疾患のリスクを高めることにつながります。また、高血圧は高齢者に限らず、若年層でも発症し得る点にも注意が必要です。

 

高血圧症は、大きく本態性高血圧と二次性高血圧に分類されます。本態性高血圧は、原因が明らかでなく、生活習慣などの環境因子や遺伝的素因により引き起こされます。一方、二次性高血圧は、特定の疾患や異常が原因で血圧が上昇する状態を指し、全高血圧患者の約5~10%を占めます。特に若年者の高血圧では、本態性高血圧の他に、二次性高血圧の可能性を積極的に考慮する必要があります。

 

本日は二次性高血圧についてお話しします。

 

 

  1. 疫学

有病率: 二次性高血圧は高血圧全体の5~10%を占め、残りの90~95%は本態性高血圧です。二次性高血圧の特徴として、重症(血圧が非常に高い)であること、複数の薬剤を服用してもなかなか血圧が下がらないこと、若年での発症、急激な高血圧の発症、血圧の変動が激しいなどが挙げられます。

 

年齢: 二次性高血圧は全年齢層であり売りますが、特に若年層(特に40歳未満)と高齢者で疑われます。

若年者(18~40歳): 原発性アルドステロン症や腎動脈狭窄(例:線維筋性異形成)などが原因として挙げられます。

高齢者(65歳以上): 腎動脈狭窄(動脈硬化性)や甲状腺機能低下症などの頻度が高く見られます。

 

性差: 性差は原因疾患によりますが、クッシング症候群は女性に多い傾向にあります。

 

危険因子: 家族歴(例:多発性内分泌腫瘍症)、肥満、薬剤使用(経口避妊薬、非ステロイド性抗炎症薬など)、生活習慣(過度なアルコール摂取)などが挙げられます。

 

高血圧症の分類

 

  1. 鑑別疾患

二次性高血圧の主な原因疾患を以下に分類して示します。

 

 (1) 腎血管性

・腎動脈狭窄: 若年者では線維筋性異形成、高齢者では動脈硬化が原因。特徴として、腹部血管雑音や治療抵抗性高血圧。

・腎実質疾患: 慢性腎臓病、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など。

 

 (2) 内分泌性

・原発性アルドステロン症: アルドステロン過剰による高血圧、低カリウム血症が特徴です。副腎腺腫や副腎過形成が主な原因となります。

・クッシング症候群: コルチゾール過剰分泌が原因です。肥満、紫斑、筋力低下などが随伴します。

・褐色細胞腫: カテコールアミン過剰分泌による高血圧で、動悸や発汗を伴います。

・甲状腺疾患: 甲状腺機能亢進症(収縮期高血圧)や低下症(拡張期高血圧)が挙げられます。

・副甲状腺機能亢進症: 高カルシウム血症を伴います。

 

(3) 薬剤・物質誘発性

経口避妊薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、覚醒剤、アルコール過剰摂取などが原因となります。

 

 (4) その他

・大動脈縮窄症: 若年者に多く、上肢高血圧と下肢低血圧の差が特徴。

・睡眠時無呼吸症候群: 夜間高血圧や治療抵抗性高血圧の原因。

・神経原性: 脳腫瘍や脳血管障害による交感神経活性亢進。

 

内分泌性高血圧疾患

 

  1. 検査

二次性高血圧の診断には、原因疾患を特定するための系統的アプローチが必要です。

 

 (1) 問診・身体所見

問診: 若年発症、急激な血圧上昇、治療抵抗性、家族歴、薬剤使用歴、症状(動悸、発汗、頭痛など)。

身体所見: 腹部血管雑音(腎動脈狭窄)、クッシング徴候(紫斑、バッファローハンプ)、甲状腺腫など。

 

 (2) スクリーニング検査

二次性高血圧が疑わしい場合、まず血液検査を行います。さらに必要に応じて、尿検査や画像検査等を追加で行います。

 

血液検査:

  電解質(低カリウム血症:原発性アルドステロン症、高カリウム血症:腎不全)

  腎機能(クレアチニン、eGFR)

  血糖(クッシング症候群や糖尿病合併)

  甲状腺機能(TSH、FT4)

  アルドステロン/レニン比(原発性アルドステロン症)。

  カテコールアミンまたはその代謝物(褐色細胞腫)。

尿検査:

  尿中カテコールアミン、メタネフリン(褐色細胞腫)。

  コルチゾール(クッシング症候群)。

画像検査:

  副腎CT/MRI(副腎腺腫、褐色細胞腫)。

  腎動脈ドップラー超音波、CTアンギオグラフィー(腎動脈狭窄)。

  心エコー(大動脈縮窄症)。

その他:

  眠ポリグラフィー(睡眠時無呼吸症候群)。

  デキサメタゾン抑制試験(クッシング症候群)。

 

(3) 診断的アプローチ

若年発症や治療抵抗性高血圧では、まず原発性アルドステロン症、腎動脈狭窄、褐色細胞腫を疑います。

電解質異常や特徴的症状に基づき、鑑別を絞り込みます。必要に応じて専門医(内分泌科、腎臓内科、循環器科)に紹介します。

 

高血圧症は、様々な病態が原因となり血管が劣化していきます

 

  1. 治療法

治療は原因疾患に応じて行われます。以下に主な疾患ごとの治療法を記載します。

 

 (1) 腎動脈狭窄

治療: 経皮的血管形成術(ステント留置)や外科的再建、降圧薬(ACE阻害薬やARBは腎機能悪化に注意)を用いてコントロールを行います。

予後: 血圧コントロール改善率は50~70%。

 

 (2) 原発性アルドステロン症

治療: 副腎腺腫であれば、外科的切除(副腎摘出術)を行います。両側副腎過形成ならアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンやエプレレノン)を用います。

管理: 低カリウム血症を是正します。

 

 (3) クッシング症候群

治療: 副腎腫瘍や下垂体腺腫の外科的切除を行います。薬物療法(メチラポン、ケトコナゾール)や放射線療法が適応となる場合もあります。

 

 (4) 褐色細胞腫

治療: 腫瘍摘出術を行います。

注意: カテコールアミン急上昇による高血圧クリーゼに備える必要があります。

 

 (5) 薬剤誘発性

治療: 原因薬剤の中止や変更を行います。(例:NSAIDsからアセトアミノフェン)

管理: 血圧モニタリングと生活習慣指導を。

 

 (6) 睡眠時無呼吸症候群

治療: CPAP(持続陽圧呼吸療法)、体重管理、口腔内装置が有用です。

効果: 血圧低下と心血管リスクを低減します。

 

 (7) 一般的な降圧治療

原因治療が困難な場合や補助的に、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿薬などを併用します。

生活習慣改善(減塩、運動、禁煙、ストレス管理)が重要。

 

定期的な血圧測定が大切です!

 

まとめ

若年者 (特に40歳未満)の高血圧は、二次性の可能性も考えられるため、積極的に原因精査を行うことが望まれます。また高齢者であっても、3剤以上の降圧薬(利尿薬を含む)でコントロールが困難な治療抵抗性高血圧では、二次性高血圧を疑います。

 

原因疾患の早期発見と治療により、血圧コントロールや合併症予防が可能となります。高血圧症でお困りの方、気になる方はお気軽に当院までご相談下さい。

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