2025年11月の1枚です (Sparks)
Sparks
Kimono My House (1974)
スパークスはメイル兄弟を中心としたグループで、70年代ロック史に燦然と輝く、極めてユニークで刺激的な作品を数多く残しました。私が大学生の頃に初めて聴いたときの感想は、「クイーンのように奇抜な音楽だな」でした。ところが、クイーンが多重コーラスとダイナミックな展開、そしてファルセットを本格的に爆発させた名盤『Queen II』をリリースしたのは、本作のわずか2ヶ月前です。実はスパークスがクイーンの音楽に影響を与えていたことを後に知り、彼らの放つ前衛的な音の美学に惚れ込みました。
本日は、彼らの代表作であり最高傑作とも称される『Kimono My House』(1974年)を御紹介します。
戦時中の日本のプロパガンダ写真にインスパイアされたジャケットカバー
このアルバムの最大の魅力は、極端なコントラストの美学にあります。
・ラッセル・メイルのオペラ歌手のような超高音ファルセットと、ロン・メイルの無表情で氷のようなビジュアルの対比
・グラムロックの派手さとキャバレー/オペレッタ的な劇場性の融合
・皮肉とユーモアに満ちた歌詞と、異常なまでにキャッチーなメロディの同居
など、枚挙にいとまがありません。
CDやカーステレオで聴いているだけでは気づきませんでしたが、UKオリジナル盤のレコードで再生すると、各々のメンバーの奏でる音のダイナミズムが文字通り炸裂します。本当に途方もなく魅力的な音楽だと、改めて衝撃を受けました。
MAT A2/B3と2U/1U、どちらも素晴らしい音質です
スパークスの音楽は、ジークフリード&ロイを思わせるヨーロッパのキャバレー/オペレッタを基調に、キンクス、ザ・フー、ビーチ・ボーイズ、そしてロキシー・ミュージックやデヴィッド・ボウイ、T.レックスといったグラムロックを茶化すような要素をごちゃ混ぜにした、唯一無二の奇抜さが特徴です。
アルバムは、異常なまでにキャッチーでありながら完全に狂っている名曲「This Town Ain’t Big Enough for Both of Us」で幕を開けます。開始わずか20秒で「銃声→オーケストラ・ヒット→ラッセルの絶叫ファルセット」が炸裂します。西部劇の決闘をキャバレーで再現したような、狂気の3分12秒です。クイーンが「Bohemian Rhapsody」を発表する1年以上前に、すでにこれをやってのけた事実は本当に驚愕です。アヴァンギャルドが過ぎますが、一度聴いたら頭から離れない中毒性があり、瞬く間にスパークスの世界に引き込まれてしまいます。
バンドの佇まいもどことなくクイーン (笑)
ロンの書いた「Thank God It’s Not Christmas」は、シニカルで皮肉たっぷりな、孤独と退廃のルサンチマンが凝縮された名曲です。この歌詞、本当に大好きです。「Here in Heaven」や「Talent Is an Asset」に聴かれる天使のようなファルセット・ハーモニーも、まさにスパークスならではです。『Queen II』の「Procession」~「Ogre Battle」や『Sheer Heart Attack』の「Killer Queen」よりも明らかに先行しており、フレディ率いるクイーンがスパークスから強烈な影響を受けていた証拠とも言えます。
ステージ上でのメイル兄弟の動と静の対比は一見の価値あり!
「Complaints」は、ゆったりとしたAメロから徐々にテンポを上げ、サビで一気に爆発する、とても洒落た名曲です。最後の「Equator」は、恋人に捨てられた男が「じゃあ赤道で会おう」と約束し、本当に何年も赤道で待ち続けるという、完全なる狂気の曲です。常人には到底理解できない世界観を平然と繰り広げるスパークス、本当に最高です。
個性的な魅力に溢れたメイル兄弟
ロサンゼルス出身のメイル兄弟ですが、イギリスの地で大ブレイクを果たしました。
既存のジャンルには到底収まらない「アート・ポップの極北」として、後世に多大な影響を与えた功績は計り知れません。
ぜひ一度、スパークスの唯一無二の世界観をご賞味ください!
