心房細動
心房細動はどんな病気?
心房細動は、心房やその周囲 (肺静脈や上大静脈)に異常興奮が出現し、心房内を不規則かつ小刻みに痙攣させる病気です。心房内の心拍数は350〜600回/分に達し、頻脈となるのが特徴です。高齢化と共に患者数は増加の一途を辿っており、日本における患者数は約130万人、潜在的な患者数は200万人に上ると言われています。また女性より男性で発症しやすいという報告があります。
心房細動の原因
心房細動の原因はいくつもあり、個々の患者さんによって、その成り立ちは異なります。
代表的なリスク因子は以下のとおりです。
- 加齢 (70代では約5%、80代になると約10%の人で心房細動がみられます)
- 心疾患 (虚血性心疾患、肥大型心筋症、僧帽弁疾患など)
- 高血圧症
- その他の慢性疾患 (甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸、メタボリックシンドローム、糖尿病、慢性腎臓病、肺疾患)
- 飲酒
- ストレス (肉体的・精神的)
- 家族歴
- 遺伝的要素
心房細動罹患者の多くは、加齢や高血圧に伴うものと考えられます。心疾患やその他の慢性疾患も原因となります。生活習慣もまた、心房細動の発生に影響を及ぼします。平均2合/日以上の飲酒をすると、心房細動の発症リスクが約2倍になるとの報告があります。
一般に、心房細動は高齢者の疾患と考えられていますが、20〜30代の若年者でも心房細動を発症することがあります。このような場合は、遺伝的要素が強く関与しています。心房細動と関連する遺伝子多型はこれまでにいくつも報告されています。先天的な遺伝子異常により、心房内から異常な電気信号が発しやすくなることが原因と考えられます。
心房細動のメカニズム
心房細動のメカニズムは非常に複雑で、現在も完全には解明されていませんが、電気的異常興奮と心房筋の障害が関与します。つまり、心房のどこかから異常な電気信号が発生 (電気的リモデリング)し、その電気信号が痛んだ筋肉内 (構造的リモデリング)を不規則に通過しながら回り続けることが、心房細動の主なメカニズムと考えられています。
心房細動の発生機序
1998年に、フランスのHaïssaguerre氏らのグループは、心房細動の起源は約90%が肺静脈由来であることを報告しました。肺静脈の起始部には心筋スリーブと呼ばれる薄い筋肉が半袖のように巻き付いています。高血圧などで心臓の筋肉に負担がかかった際に、薄っぺらい肺静脈の筋肉が最初にダメージを受け、その痛んだ筋肉から異常な電気信号が生じることが原因と考えられています。(但し、諸説あります)
心房細動の起源の大半が、肺静脈にあることが判って以来、心房細動のカテーテルアブレーション治療は飛躍的に進歩しました。
心房細動の症状
心房細動になっても、半数近くの人は症状がありません。
心房細動は頻脈性不整脈であり、動悸が頻度の高い症状ですが、労作時の息切れや胸痛を感じる方もいます。
心房細動が原因で来たす疾患
① 脳梗塞 (心原性脳塞栓)
心房細動が持続すると脳梗塞を発症する危険性が高まります。心房細動により、心房内 (特に左心耳)で血流がうっ滞することが原因で、血液が塊り血栓を形成し、それが脳血管へ飛ぶことで脳梗塞をきたします。心原性脳梗塞は最重症 (ノックアウト型といいます)で、半身麻痺を来します。重篤な後遺症によって、これまでの生活に戻ることができなくなります。
② 急性心不全 (頻脈誘発性心筋症)
頻脈性心房細動が持続すると、心臓が疲弊することで急激な心臓のポンプ機能低下をきたし、全身に血液を送り出すことができなります。心臓 (左心室)から駆出することができなくなった血液は、その手前にある肺に溜まり、激しい呼吸困難が出現します。このように、急激に呼吸状態が悪化することを、急性心不全といいます。頻脈の改善により収縮能の改善するのが、頻脈誘発性心筋症の特徴です。
③ 慢性心不全 (弁膜症)
急性心不全と異なり、長い経過の中で徐々に心不全が増悪します。心房細動が持続すると、心臓に負担がかかり続けて心臓の筋肉が痛みます。リモデリングと呼ばれ、構造的変化をきたし、心筋が硬くなりその機能を失っていきます (心筋の線維化)。心筋のリモデリングが進むと、心房は拡大していきます。それに伴って、心房と心室の間にある三尖弁と僧帽弁は引き延ばされた結果、きちんと閉じることができなくなり、弁逆流を来たすようになります。長い経過の中で進行することで、弁逆流の重症化を引き起こし、心不全が増悪していきます。その結果ポンプ機能が損なわれてしまい、胸に水が溜まったり、全身の浮腫が出現します。
④ 認知症、うつ病
心房細動と認知症、うつ病の間で関連があることが報告されています。小さな血栓が脳障害を来たすことが原因と言われています。
心房細動のタイプ
心房細動は、慢性的に進行する病気と考えられており、発作時間がどの程度持続するかにより、以下の3つに分類されます。
- 発作性心房細動:7日以内に自然に正常な脈に治まる
- 持続性心房細動:7日を超えて心房細動が持続する
- 長期持続性心房細動:心房細動が1年以上持続する
また、除細動を試みても停止することができない心房細動を永続性心房細動 (慢性心房細動)ということがあります。
心房細動の検査・診断
動悸などの自覚症状があり持続していれば、心電図にてすぐに診断がつきます。症状のない (無症候)の方は気付きにくいですが、健康診断などで偶発的に見つかることもあります。自身で脈のリズムをみる検脈は、誰でも実践できて診断に繋げることができるので、非常に重要です。
問診にて高血圧症、糖尿病、心疾患の有無を確認します。原因疾患がある場合は、心房細動が潜んでいる可能性があります。
12誘導心電図
不整脈精査で最も大切な検査です。心房細動は絶対不整脈とよばれ、あらゆる規則性を有さないのが特徴です。
長時間心電図 (ホルター心電図)
通常の12誘導心電図では検出されにくい発作性心房細動の捕捉に有用です。通常24時間ホルター心電図が一般的ですが、1〜2週間記録できるタイプもあります。
携帯心電計
心電図の一種で、症状 (イベント)が出た際に、その場で心電図を記録することができ、診断への近道となります。また近年はスマートウォッチの普及により、心房細動をより早期に見つけることができるようになってきています。
心臓超音波検査 (心エコー検査)
心臓の構造的・機能的異常を評価することができます。通常は胸の表面から測定する経胸壁心エコー検査を行いますが、心臓内の血栓評価が必要なときは、食道までプローブ (深触子)を飲み込んでもらう経食道心エコー検査を行います。
血液検査
血液検査で、糖尿病などの内分泌疾患を含めたスクリーニングや凝固機能 (D-ダイマーなど)を調べます。甲状腺疾患が心房細動の原因となっていることがあり、その場合はその甲状腺疾患の精査や治療が必要になります。
頭部MRI
心房細動は、知らぬ間に脳梗塞 (無症候性脳梗塞)を起こすことがあります。MRIでは脳梗塞の状態や、脳の血流の評価ができます。
心房細動の治療
① 薬物治療
抗凝固療法
心房細動治療の基本は抗凝固療法です。なぜならば、心房細動は脳梗塞を来たし、致命的な後遺症を残すリスクがあるからです。前述のようにCHADS2スコアの点数が上がるにつれて、脳卒中のリスクが上昇します。CHADS2スコアが1点以上の場合、抗凝固療法 (ワルファリンやDOAC)を開始します。
ワルファリンは1954年に承認されて以来、今日に至るまで長い間使用されてきました。ワルファリンは安価で、エビデンスに富んだ薬剤ではありますが、納豆や緑黄色野菜などのビタミンKを多く含む食べ物に影響を受けやすく、食事の制限がかかってしまいます。また定期的な血液検査による薬剤投与量の調整も必要となります。2010年代より、非ビタミンK拮抗の直接阻害型経口抗凝固薬 (DOAC)が出現しました。血栓予防効果はワルファリンとDOACで同等で、出血リスクはDOACの方が優れていることが示され、現在ではDOACの内服がより推奨されています。ただし僧帽弁狭窄症、機械弁置換後の患者さんでは使用できない場合もあります。また薬価が高いというデメリットもあります。
ご高齢者、腎機能が低下した患者さんでは、DOACは減量して内服します。心房細動のみならず、深部静脈血栓症や肺塞栓症でも血栓に対する効果が期待でき、非常に優れた薬剤です。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
CHADS2 score
心房細動による脳梗塞の発症リスクを評価するスコアとして用いられます。
下記の項目の合計点数によりスコア化され、年間脳梗塞発症率は0点から順に、1.9%、2.8%、4.0%、5.9%、12.5%、18.2%と報告されています。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
CHA2DS2-VAScスコア
CHA2DS2-VAScスコアはCHADS2スコアをさらに詳細に点数化したもので、高リスクあるいは極めて低リスク群の患者さんにおける脳梗塞リスクを評価するに有用です。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
HAS-BLEDスコア
CHADS2やCHA2DS2-VAScスコアに対し、HAS-BLEDスコアは脳出血のリスクスコアになります。年間の大出血発症率は0点から5点以上でそれぞれ、1.13%、1.02%、1.88%、3.74%、8.7%、12.5%であり、3点以上が高リスクとなります。高血圧、脳卒中、高齢者は双方に共通する因子であり、出血のリスクが高い患者さんでは、血栓塞栓症のリスクも高いといえます。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
抗不整脈薬 (リズムコントロール)
抗不整脈薬は、心房細動を停止させ、正常な脈 (洞調律)に戻します (リズムコントロール)。洞調律維持することで、脳梗塞などの重篤な後遺症を防ぐことができます。また発作性心房細動の場合は、動悸症状が出現した際に、頓薬することで早期の洞調律化が期待できます。
抗不整脈薬はメリットがある反面、副作用に注意しなければなりません。各薬剤により副作用は異なりますが、一般的に使用されるIA, IC群薬では、めまい、ふらつき、口渇、排尿困難などの他に、致死的な不整脈 (心室性不整脈)を来たすことがあります。IV群のベプリジルもQT時間の延長に注意が必要です。またIII群のアミオダロンは非常に効果が期待できる薬ですが、甲状腺機能低下や間質性肺炎を来たすことがあります。これらの薬剤は、定期的な心電図、血液検査でのチェックが必要となります。ご高齢の方では副作用のリスクが高まりますので、使用が躊躇されます。
また抗不整脈薬にて、心房細動を長期的に抑制することは困難です。初めは薬がよく効いていても、経過の中で正常な脈を維持出来なくなります。そのような際は、レートコントロール薬への切り替えやカテーテル治療を考慮することも重要です。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
β遮断薬、Ca拮抗薬 (レートコントロール)
心房細動は、一般的に頻脈になることが多いです。ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬は、刺激伝導系に作用して、心拍数を抑制します。心室へ送られる電気信号が正常に近づけば、心臓の負担は軽減し、心不全の合併を予防することができます。
抗不整脈薬と比較して、安全に使用することができますので、ご高齢の方ではこれらの薬剤を選択することが多いです。
② 非薬物治療
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは、数本のカテーテル(細い管)を脚の付け根から血管 (静脈)を通して心臓の内部に挿入し、そのカテーテルを使って異常な電気信号を発している箇所を見つけ出し、病変を焼灼したり冷凍凝固したりする内科的治療法です。
不整脈ごとに、カテーテルアブレーションの治療方法は異なります。
心房細動は、カテーテルを用いて左右の肺静脈の付け根へ通電し、電気的な隔離を行う「両側肺静脈隔離術」が行われるようになり、現在では確立したゴールデンスタンダート治療として、世界中で行われています。
日本人での心房細動発生起源をみた我々のデータでは、発作性でも非発作性心房細動 (持続性や長期持続性)でも、肺静脈起源は約80%でした。
カテーテルアブレーションの適応と治療
カテーテルアブレーション治療を行うメリットは、正常な脈 (洞調律)を維持することで、患者さんの生活の質の改善 (動悸、息切れ、易疲労感、運動耐容能の改善)が大原則とされてきました。
そのため、カテーテルアブレーションの適応に関しては、日本循環器学会のガイドラインでは症状の有無で分類されています。
① 症候性心房細動 (症状あり)
症状のある(症候性)発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションは、第一選択となっています。一方で、持続性及び長期持続性心房細動に関しては、まだ検討の余地が残っています。心房細動の持続期間が長くなるほど、アブレーション治療の推奨度は低下しますが、それでも持続性では、推奨クラスIIaです。特に、心不全を伴う場合は、アブレーションを行うことで予後改善効果が示されており、推奨されます。
また高齢者に関しましては、個々の患者さんの状態や背景を考慮して、アブレーション治療を行うかどうか判断していきます。アブレーション治療のメリット・デメリットを十分に説明し、患者さんの希望を反映しながら治療方針を立てていくことが重要です。
(日本循環器学会 ガイドラインより抜粋)
② 無症候性心房細動 (症状なし)
アブレーションの適応は、症候性に限られていました。しかしながら、症状の有無に関わらず、心房細動患者さんの予後を改善することが示されてきました。また、無症候性患者さんの予後は、症候性患者さんよりも悪いともいわれています。そのため、現在では症状の有無に関わらず、患者さんのメリットになると判断された場合、アブレーション治療を行うことが一般的となっております。
高周波アブレーション (RFCA; radiofrequency catheter ablation)
カテーテルの先端より高周波が出ることにより、心筋に50〜60℃の熱を加えます。熱が心筋の全層性に伝わると、電気信号を通さなくなります。円を描くように、肺静脈の起始部へ点状の焼灼を加えていきます。隔離が完成すると、心房と肺静脈間での電気的交通が遮断され、隔離が完成します。手技時間は2〜3時間程度です。
また、先端から水が出るイリゲーションカテーテルや先端の荷重がリアルタイムに分かるカテーテルが登場し、心房細動のアブレーション成績と安全性は飛躍的に向上しました。
クライオアブレーション (バルーンアブレーション)
クライオアブレーションは高周波による焼灼ではなく風船 (クライオバルーン)を使用し、心筋に冷凍凝固壊死 (マイナス40〜50℃)させます。これはクライオバルーンにより肺静脈流入部周囲に冷凍凝固壊死を一度に円周状に作成し、これを4本に肺静脈に行います。そのため高周波アブレーションと比べて、短い時間で行うことができます。(1.5〜2時間程度)
カテーテルアブレーションの成功率
1回のアブレーション治療での成功率は、一般的に発作性で85%程度、持続性心房細動で70%程度、長期持続性/慢性心房細動で50〜60%程度です。再発する原因は、①肺静脈の再伝導、②非肺静脈部に起源があることです。技術の進歩と心房細動のメカニズムの解明が進む中で、成功率は上がってきましたが、根治が難しいケースがあるのが現状です。問題は肺静脈以外に起源があった場合です。両側の肺静脈隔離を完成させた後は、それ以外の起源に対して、各施設で治療戦略を立てながら根治を目指しています。
高周波とクライオ、どちらの手技を行う?
どちらのアブレーションも有効性が高く、成功率に差はありません。高周波アブレーションは、焼灼に時間がかかりますが、非肺静脈起源であった場合、追加の治療にも有効です。どの場所に原因があっても、カテーテルを配置できる利点があります。一方のクライオアブレーションは、手技が比較的簡便で、手技時間が短く行うことができます。しかしながら、肺静脈以外の治療につきましてはまだ確立していないので、持続性や長期持続性心房細動のアブレーション治療では従来の高周波アブレーションが選択されることが多いのが現状です。
カテーテルアブレーションの合併症
カテーテルアブレーション治療では、まれに合併症が起こることがあります。
- 血栓塞栓症 (治療中に血栓や気泡が発生し、脳や全身の動脈などを塞いでしまい後遺症が残ることもあります)
- 心タンポナーデ (カテーテル操作や焼灼に伴い、心臓の筋肉や血管が傷ついて、血液が外に漏れ出ることがあります)
- 肺静脈狭窄
- 横隔神経麻痺
- 食道瘻
- 出血
など
カテーテルアブレーション術後について
カテーテルアブレーションは有効性の高い治療ですが、残念ながら再発することがあります。そのため、術後は心房細動の再発がないか、慎重に経過を見ていく必要があります。
術後3ヶ月の間は、blanking periodといい、不整脈が出やすい期間です。その期間は、治療による急性炎症などの影響で不整脈を認めることがありますが、炎症の改善とともに落ち着くことが多いです。そのため、その期間 (3ヶ月以内)を再発に含めず、術後3ヶ月以降を再発と定義します。
術後は、症状の有無だけでなく、12誘導心電図、ホルター心電図、長時間心電図等を使用しながらフォローしていきます。症状のない (無症候性)の患者さんは、心房細動の再発に気づきにくいため、特に注意が必要です。
抗凝固療法は、血栓形成の観点から、少なくとも術後2ヶ月間は継続の必要があります。経過が良ければ、CHADS2スコア等でのリスクに応じて、中止も考慮します。無症候性の患者さんは、ここでも慎重な判断が必要となります。いずれにしても、抗凝固療法を中止する際は、出血・塞栓リスクについて患者さんと十分に議論した上で、方針を決めることが大切です。
WATCHMAN (ウォッチマン)手術 (左心耳閉鎖術)
心房細動により血栓の約9割は、左心房にある左心耳にできると言われています。WATCHMAN(ウォッチマン)は、開心術をする必要がなく、鼠径部の静脈からカテーテルを通して心臓に挿入し、左心耳を閉鎖してしまうデバイスです。
500円硬貨ほどのサイズで、左心耳を塞ぐように設計されており、手術後にはWATCHMAN(ウォッチマン)を覆うように内皮化が進み、左心耳が永久的に閉鎖されることによって脳梗塞のリスクを抗凝固療法並みに低減させながら、抗凝固薬の服用を中止することができるようになります。
電気的除細動
電気的除細動は、心臓に強い電流を流し、バラバラになっている心臓の動きを正常なリズムに戻す治療です。もちろん、鎮静して眠っている状態で行いますので、症状はありません。
しかし、正常化したリズムも、経過の中で心房細動に戻ってしまうことが多いです。あくまでも対症療法であり、薬剤での加療やカテーテルアブレーションを考慮することも重要です。
③ 外科的治療
メイズ (Maze)手術
1980年代にコックス氏らによって開発された心房細動に対する根治手術です。
メイズ手術とは、左右の心房の心筋に対し、4センチ幅以下の短冊となるような迷路 (メイズ)を作製して電気的制御を行なう手術です。高周波焼灼、冷凍凝固などが使用されます。この手術では、脈の治療と同時に心原性脳梗塞の予防を目的とした左心耳切除を行います。左心耳を切除しておけば、仮に手術後に心房細動が再発しても、抗凝固剤を服用する必要がないというカテーテル治療にはないメリットがあります。主に僧帽弁手術や他の人工心肺を使用した開心術の際に、併施術式として行われて、単独で行うことはごく稀です。
ウルフ―オオツカ法手術 (低侵襲心房細動手術)
手術手技やテクノロジーの進歩により、人工心肺を使用せず、完全内視鏡下に、心臓の外側から、「左右の肺静脈および上大静脈の隔離と左心房後壁のアブレーションおよび左心耳切除」が可能となりました。短時間(1時間半程度)で終了し、1回の手術でリズムコントロールの成績(正常な脈の維持率)は発作性でも慢性型でもカテーテル治療より優れ、左心耳をきれいに切り取ってしまうことにより出血性副作用のある抗凝固治療からの速やかな離脱が可能であるメリットがあります。ウルフ―オオツカ法の左心耳マネジメントによる脳梗塞予防効果の中期成績はワーファリンによる保存的治療やカテーテルによるデバイス(ウォッチマン)移植術よりはるかによいという結果も報告されています。心房細動の有力な治療選択肢の一つとして、国内外で評価されています。