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動脈硬化外来

「ヒトは血管とともに老いる」

アメリカの著名な医学者、ウィリアム・オスラー先生は、「ヒトは血管とともに老いる」
という言葉を残しました。動脈硬化は老化の最たる症状です。 血管をいかに若々しく保ち、動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患や脳血管障害の発病の予防に結びつけることができるかが「健やかに老いる」ための必須条件の1つといえます。

動脈硬化とは

動脈とは、心臓から送り出される血液を体の隅々まで送る血管の事です。動脈は酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を持っており、通常は体の中の各臓器に必要な血液を送るのに、十分な太さや柔らかさがあります。加齢や様々な危険因子によって、この動脈の壁が厚く、硬くなって弾力性(しなやかさ)が失われるのが動脈硬化です。

動脈硬化は、喫煙・コレステロール・高血圧・肥満・運動不足などの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。

血液中の悪玉コレステロール (LDLコレステロール)や中性脂肪が、上の図のように血管の壁に付着し蓄積します。これをプラークといいます。

プラークが蓄積し、心臓を栄養する血管(冠動脈)に高度狭窄をきたすと狭心症を来します。
またプラークは内膜に覆われていますが、ひとたびその内膜が破けると、プラークが血管内に漏れ出て血栓(血の塊)を形成します。その結果、心筋梗塞脳卒中などの命に係わる合併症が引き起こされてしまいます。その他にも、閉塞性下肢動脈硬化症、腎動脈狭窄症、頸動脈狭窄症など全身の血管異常を来します。

動脈硬化netより

しなやかな血管であれば、血管内の水分量 (血液量)が増加した際には、速やかに膨らんで血圧上昇を代償します。しかし、動脈硬化で固くなった血管では、その柔軟性を失ってしまい代償ができず、血圧の上昇をきたします。

動脈硬化の検査

動脈硬化は、心臓や脳血管のみならず全身の血管で起こりうります。動脈硬化の評価として、以下の検査があります。

血圧脈波検査

① ABI

上腕の血圧と足の血圧の比率を計算することにより、足の動脈の詰まりを評価します。横になった状態で「腕の血圧」と「足首の血圧」の比をみて足の動脈の詰まりを診断します。通常足の動脈につまりのある場合は足の血圧が下がり、ABIが低下します。ただし、糖尿病や腎臓透析療法をされている方は、下肢の血管の硬化が進んでいるため、異常高値を示すことがあります。このようなケースでは、足の動脈の虚血の指標として用いることはできません。

② CAVI

CAVI(キャビィ)は大動脈を含む「心臓(Cardio)から足首(Ankle)まで」の動脈(Vascular)の硬さを反映する指標(Index)で、動脈硬化が進行するほど高い値となります。大動脈の進展性の低下は心疾患の発症や予後を規定する因子となることが知られており、早期診断と管理に役立ちます。
さらにCAVIは頚動脈エコー等で測定されるスティフネスパラメータβ法に基づき算出され、血圧に依存されない血管固有の硬さを表します。

CAVI基準値

③ 血管年齢

動脈硬化の危険因子を持たない人たちのCAVIの平均値と対比することで、血管年齢を評価する事ができます。
同年齢の健常者よりCAVIが高い場合は、それだけ動脈硬化が進んでいると考えられます。動脈硬化を促進する糖尿病や高血圧などを合併しないよう、生活習慣病を是正することが望まれます。

頸動脈エコー

首に超音波をあて、頸動脈の形を画像として映し出す検査です。動脈壁の厚さやプラークの大きさ、動脈の狭窄度(詰まり具合)などが分かります。

内膜中膜複合体厚 (IMT)

血管壁は3層になっています。そのうち内膜と中膜を合わせてIMTと言います。健康な人のIMTは1mm未満ですが、厚さが1mmを超えると、動脈硬化が進んでいる可能性が考えられます。

頸動脈は、全身の動脈の中でも血管の性状が評価しやすい部位です。頸動脈にプラークが蓄積している場合、他の部位でも動脈硬化が進行している可能性があります。全身の血管 (動脈)の状態を反映しているとも言え、評価を行うことは非常に重要です。

CT、MRI検査

CTやMRI検査は、頸動脈エコーにてリスクが高いと判断された場合に行われる検査です。CT検査では、造影剤を用いて血管を染めて評価します。冠動脈の他に、胸部や腹部の大動脈、下肢の動脈も評価できます。

造影CT検査

MRI( MRA)検査は、脳や下肢の動脈の評価目的で行うことが多い検査です。造影剤は用いずに、血液が流れる部位が白く描出されます。脳梗塞をきたす前の、血流が低下している段階でも発見することができます。

MRI (MRA)検査

動脈硬化の予防と治療

動脈硬化は、喫煙・コレステロール・高血圧・糖尿病・肥満・運動不足などの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。いわゆる生活習慣病の管理は、動脈硬化の進行を抑える上で、非常に重要です。

これら動脈硬化の危険因子には、男性や加齢といった自分ではコントロールできない因子と、喫煙、肥満、高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、ストレスのようにある程度自身でコントロールできる因子があります。

(1) 高血圧症

140/90mmHg以上の血圧は、動脈硬化が進みやすいと言われています。高血圧症のガイドラインでは、正常血圧は130/85mmHg未満です。サイレント・キラー (沈黙の殺し屋)と言われる高血圧症は、放っておくと動脈硬化を進めてしまいます。高血圧の治療には、食事・運動療法や降圧薬の内服治療があります。血圧は24時間刻々と変化しています。血圧測定は、医療機関を受診した時だけでなく、日々自宅でチェックすることも大切です。

(2) 高コレステロール血症 (高脂血症)

脂質のうち、動脈硬化を促すのは、LDL (悪玉)コレステロール、高TG (中性脂肪) 血症、リポ蛋白 (Lp(a))、レムナントリポ蛋白 (レムナント粒子)です。逆に、動脈硬化を抑制するのは、HDL (善玉)コレステロールです。
総コレステロールは220mg/dL以上、LDL (悪玉)コレステロールは140g/dL以上、またHDL (善玉)コレステロールは40g/dL以下になると、狭心症や心筋梗塞の合併が増加すると言われています。高コレステロール血症の治療には、食事・運動療法のほか、中性脂肪や悪玉コレステロールを低下させるための内服薬や注射薬があります。高コレステロール血症の患者さんの血液を観察すると、ドロドロしていることが目に見てわかります。(下の写真)

健診等で高コレステロール血症を指摘された方は、少なからず思い当たる原因があるはずです。食事の見直しや運動習慣を持つなど、できることから始めることが大切です。

(3) 糖尿病

糖尿病で、高血糖の状態が慢性的に続くと、血管の壁が傷つきコレステロールが蓄積して動脈硬化を進行させます。

糖尿病の診断に重要なHbA1cの正常範囲は、糖尿病治療ガイドライン(日本糖尿病学会)で4.6〜6.2%です。特定保健指導の基準値は5.6%未満です。基準値を超えてきた場合、糖尿病の可能性を考慮して、医療機関の受診が望まれます。

糖尿病

左足趾の虚血性壊疽

他のリスク因子と並べて、糖尿病が体に及ぼす影響は非常に恐ろしいです。糖尿病の3大合併症は、①糖尿病性腎症、②糖尿病性網膜症、③糖尿病性神経障害ですが、全身の血管が蝕まれボロボロになっていく、本当に恐ろしい病気です。動脈硬化が進むと下の写真のように足が腐る (壊疽)ことがあります (本当に起こります)。糖尿病の治療は、食事療法から、薬物療法やインスリン治療まで幅広いです。気になった際は、当院までお気軽にご相談ください。

(4) メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、肝臓や腸などの内臓まわりに脂肪が過剰に蓄積した状態に加え、脂質異常、高血圧、高血糖の2つ以上が当てはまる状態をいいます。

肥満 (以下に該当)

ウエスト周囲径 男性 85cm以上、女性 90cm以上

高血糖 (以下に該当、もしくは治療中)

空腹時血糖 110mg/dL以上あるいはHbA1c 5.5%以上

高血圧症 (以下に該当、もしくは治療中)

収縮期血圧 130mmHg以上あるいは拡張期血圧 85mmHg以上

脂質異常 (以下に該当、もしくは治療中)

中性脂肪 150mg/dL以上あるいはHDLコレステロール 40mg/dL未満

メタボリックシンドロームや肥満の改善のためには、適度な運動と食事のバランスが重要です。無理なダイエットは継続が難しく、長続きしません。当院では、個々の患者さんのモチベーションや生活スタイル・背景を汲み取りながら、ベストなプランを提案していけるよう心がけております。
生活習慣を見直して、規則正しい生活を心がけましょう。日々の積み重ねで大きな違いが出てきます。

(5) 肥満

肥満の程度を示す指標として、BMI (body mass index)があります。
BMI値 = 体重 (kg) ÷ [身長 (m) x 身長 (m) ]
例えば、身長170cm、体重 65kgの人ですと、
65 ÷ 1.7 ÷ 1.7で、BMI値は22.5となります。
BMIの正常値は、19.8〜24.2で、24.2〜26.4は過体重、26.4以上は肥満と定義されています。

肥満の方は血液中の脂肪が型となり、高血圧、高尿酸血症、糖尿病などを合併しやすくなります。メタボリックシンドロームと同様に、適度な運動と食事のバランスを意識して、規則正しい生活を心がけましょう。

(6) 喫煙

喫煙は、がんをはじめ、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などの呼吸器疾患、2型糖尿病、歯周病など、多くの病気と関係しており、予防できる最大の死亡原因です。
また、喫煙を始める年齢が若いほど、がんや循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、総死亡率が高くなることもわかっています。

長年タバコを吸っていたとしても、何歳であっても禁煙するのに遅すぎることはありません。「30歳までに禁煙すれば、寿命が約10年長くなる」「50歳では寿命が6年長くなる」「60歳では寿命が3年長くなる」といわれています。

タバコ(ニコチン)の依存性はヘロインやコカインと同等以上とされています。喫煙が習慣化してしまった後に、本人の意思だけで禁煙を成功することはなかなか困難です。しかし、今では禁煙をサポートする薬がありますし、禁煙外来のある医療機関も少なくありません。これらを利用するなどして、「タバコをやめようかな」と思ったら先延ばしせず、禁煙を始めましょう。また、ご家族など周囲の方も、ぜひ患者さんの禁煙をサポートしてください。

血圧脈波検査 (血管年齢検査)について

当院では、動脈硬化の進行度合い(血管年齢)をチェックできる、血圧脈波検査を導入しております。四肢に、血圧計と同じカフを巻き、10分程度で計測できる非常に簡便な検査です。血管の狭窄や血管の硬さ、いわゆる血管年齢 (動脈硬化)を計測することが可能で、費用は3割負担の方で300円程度です。ご自身の血管年齢を知る事は、脳梗塞、心筋梗塞などの動脈硬化の進行によって引き起こされる病気の予防に非常に重要です。

このような方におすすめです。

  • 高血圧、高脂血症、糖尿病や高尿酸血症をお持ちの方
  • 喫煙者
  • 肥満 (メタボ)の方
  • お酒を飲む機会が多い方
  • 運動不足の方
  • 日常的にストレスを感じることが多い方

血圧脈波検査結果に基づき、生活習慣病の管理強化や原因精査を行います。心筋梗塞や脳梗塞は、ひとたび起こしてしまうと取り返しがつきません。生活習慣病、特に高血圧、高脂血症、糖尿病の管理はとても重要です。気になられる方は、当院へご連絡ください。

健康を維持するには、日々の積み重ねが大切です。言うは易く行うは難し。無理な目標を立てても、長続きしなければ効果を発揮しません。コツコツとできる範囲で努力することが大切、継続は力なりです。当院では、患者さん一人一人の立場に立ち、目標に向かって励んでいけますよう、サポート致します。

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