メニュー

メタボは生活習慣病の第一歩? 〜あなたのお腹が教えてくれる健康のサイン〜

[2025.04.27]

メタボリックシンドローム (通称:メタボ)という言葉をご存知かと思います。年齢を重ねるにつれてお腹周りが気になり始め、食事や運動習慣を見直さないと、健康診断に行くのが億劫になります。そして、実際に「メタボ」と指摘されると、気分が落ち込んでしまうものです。では、メタボリックシンドロームとはどのような状態なのでしょうか?

 

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を基盤に、高血圧、高血糖、脂質異常が組み合わさった状態です。この状態は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患や、2型糖尿病の発症リスクを高める重大な健康問題です。向き合いたくない、避けたい気持ちも分かりますが、放置すると後々後悔する可能性があります。

 

 

 

メタボリックシンドロームの重要性

メタボリックシンドロームは、単なる肥満や生活習慣病の集まりではありません。これらの要素が互いに影響し合い、動脈硬化や代謝異常を進行させます。具体的には、以下のような影響があります。

 

・心血管リスクの増大:心筋梗塞や脳卒中のリスクが2〜3倍に上昇させます。

・糖尿病リスク:2型糖尿病の発症リスクが5〜10倍に増加します。

・全身性の影響:脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、がん(特に大腸がんや乳がん)、認知症など、さまざまな疾患と関連します。

 

日本では、40〜74歳の男性の約30%、女性の約10%がメタボリックシンドロームまたはその予備軍と推定されており、予防・対策が喫緊の課題です。

 

 

診断基準

日本では、日本内科学会を中心とする8学会が2005年に定めた診断基準が広く用いられます。以下の条件を満たす場合、メタボリックシンドロームと診断されます。

 

必須項目

内臓脂肪蓄積:腹囲周囲径:男性 ≥85cm、女性 ≥90cm

(注:日本では内臓脂肪面積 ≥100cm²に相当するウエスト周囲径を基準とする)

 

追加項目(以下のうち2項目以上)

・脂質異常:中性脂肪(TG)≥150mg/dL または HDLコレステロール <40mg/dLまたは脂質異常症の治療中

・血圧異常:収縮期血圧 ≥130mmHg または 拡張期血圧 ≥85mmHgまたは高血圧症の治療中

・血糖異常:空腹時血糖 ≥110mg/dLまたは糖尿病治療中

 

 

 

 

メタボリックシンドロームが原因となる疾患

メタボリックシンドロームは、複数の代謝異常が重なることで以下のようなリスクを高めます。

 

  1. 心血管疾患

内臓脂肪から分泌される炎症性物質(TNF-α、IL-6)が動脈硬化を促進します。また、高血圧、脂質異常、高血糖が血管を傷つけ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを約2.5倍に高めます。

 

 

  1. 2型糖尿病

内臓脂肪の蓄積がインスリン抵抗性を引き起こし、膵β細胞の機能低下を誘発します。メタボ診断者の約20〜30%が10年以内に糖尿病を発症すると言われています。

 

  1. その他の合併症

・非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD):肝硬変や肝がんのリスクを高めます。

・睡眠時無呼吸症候群:肥満による気道閉塞が原因となります。(詳細はこちら)

・悪性腫瘍:大腸がん、乳がん、子宮内膜がんのリスク増加を高めます。

・認知機能低下:血管性認知症やアルツハイマー病との関連が指摘されています。

 

 

  1. 社会的・心理的影響

肥満による自己評価の低下や社会的な偏見が、生活の質(QOL)を下げる原因となります。

 

 

メタボリックシンドロームの対策

メタボリックシンドロームの管理は、生活習慣の改善が基本です。必要に応じて薬物療法を組み合わせます。

 

生活習慣の改善

  • 食事療法:

  カロリー管理:1日25〜30kcal/kg(例:60kgの人で1500〜1800kcal)

  栄養バランス:

    炭水化物:50〜60%(精製糖を控え、食物繊維を増やす)

    脂質:20〜25%(飽和脂肪酸を減らし、ω-3脂肪酸を摂取)

    タンパク質:15〜20%

 

   具体例:

    野菜(1日350g以上、食物繊維豊富なものを優先)

    青魚(DHA/EPA豊富、週2〜3回)

    塩分制限(1日6〜8g)

    アルコールは適量の摂取を(1日20g以下、ビールなら中瓶1本程度)

   おすすめ:オリーブオイル、ナッツ、魚、野菜を中心とした地中海式食事

 

 

  • 運動療法:

   有酸素運動:週150分以上の中強度運動。(例:早歩き、サイクリング)

     1日30分、週5回が目安。10分×3回に分割しても良いです。

   レジスタンス運動:筋力トレーニングを週2〜3回(筋肉量増加で基礎代謝を向上)

   内臓脂肪減少効果:6ヶ月でウエスト周囲径を3〜5cm減らす目標。

   注意点:運動開始前には医師による評価(心血管リスク確認)が望ましいです。

 

 

  • 体重管理:

    体重を5~10%減らすと、血圧、血糖、脂質が改善します。

BMIの目標は22~25(例:80kgの人は4~8kg減)。

 

  • 禁煙・ストレス管理:

   喫煙は血管内皮機能を障害し、メタボのリスクを増悪させます。

   ストレスは内臓脂肪蓄積を促進。十分な睡眠(7~8時間)を確保しましょう。

リラクゼーションや趣味を取り入れましょう。

 

薬物療法

生活習慣の改善が不十分な場合、以下のような薬物療法を検討します

 

・高血圧:ACE阻害薬、ARB、ARNI、Ca拮抗薬など。

・脂質異常:スタチン、フィブラート、EPA製剤など。

・高血糖:メトホルミン、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬など。

・肥満:オルリスタットやGLP-1受容体作動薬(保険適応外の場合も)。

注意点:薬物療法は生活習慣改善の補助であり、食事や運動療法がとても重要です。

 

定期的な健康管理

健康診断:年1回の特定健診でウエスト周囲径、血圧、血糖、脂質をチェックします。

医療機関の受診:メタボ診断後は3〜6ヶ月ごとのフォローアップが良いです。

多職種連携 (医師、管理栄養士、運動指導士、心理カウンセラー) での管理が望まれます。

 

 

予防のポイント

メタボリックシンドロームは予防可能な疾患です。以下の習慣を若いうちから取り入れることがとても重要です。

 

・定期的な運動習慣:1日8000〜10000歩の歩行を目標にしましょう。

・バランスの良い食事:加工食品や高糖質飲料を避けましょう。

・体重のモニタリング:20歳時の体重を基準に±5kg以内に維持できればベストです。

・ストレス管理:趣味やリラクゼーションを積極的に取り入れましょう。

 

 

メタボリックシンドロームは、心血管疾患や糖尿病のリスクを高める重大な病態です。早期発見と対策が不可欠で、診断はウエスト周囲径と代謝異常に基づきます。治療の中心は生活習慣の改善(食事、運動、体重管理)で、薬物療法や定期的な健康管理を組み合わせることで、合併症のリスクを大幅に減らせます。個人の努力に加え、家族や社会全体での予防意識の向上がとても重要です。

 

当院は循環器内科を専門とし、メタボリックシンドロームや生活習慣病の管理に力を入れています。肥満外来も行なっております。健康診断の結果で気になる点がある方や受診を勧められた方は、ぜひお気軽にご相談ください!

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME