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家庭用AEDについて

[2024.09.21]

AEDをご存知でしょうか?AEDは、Automated External Defibrillatorの略で、日本語では自動体外式除細動器と言います。ひとたび心室性不整脈 (心室頻拍や心室細動など)をきたすと、心臓のポンプ機能は著しく低下します。全身への酸素供給がストップしてしまい、やがて心停止に至ります。AEDはこのような致死性不整脈が出現した際に除細動を行い、正常な脈のリズムに戻してくれるデバイスです。

 

現在は至る場所に設置されているAEDですが、いざ使う場面に遭遇した方は少ないと思います。かく言う私も、除細動器の植え込み手術や院内で除細動器を使用することは幾度となく経験していますが、院外で実際にAEDを用いて救命にあたるという経験はありません。当クリニックでもAEDを設置して万が一の事態に備えておりますが、今では家庭用AEDも販売されております。

 

日本では毎年9万人以上の方々が心臓突然死で亡くなっています。その数は、交通事故市の35倍、火災事故死の63倍と言われています。1日あたり250人、6分に一人が亡くなっています。とても多い数です。救急車の平均到着時間は10.3分ですが、心肺停止の場合、1分毎に救命率が7〜10%低下します。我々医師は、病院に到着した患者さんの治療に尽力しますが、現実には、到着した時点でその方の予後はほとんど決まっているといっても過言ではありません。

 

救命率の上昇に、バイスタンダー(倒れたときにすぐに心肺蘇生を行なってくれる人)の存在は極めて重要です。その場に居合わせた人による1分、1秒でも早い救命活動が、患者さんの人生を大きく左右します。総務省消防庁の報告によると、心肺蘇生が行われなかった場合の1ヶ月後社会復帰率は3.3%であったのに対し、心肺蘇生とAEDによる除細動を行った場合は42.6%まで上がると言われています。

 

 

なぜ家庭用AEDが必要なのか?

日本では心肺停止の約67% が住宅で発生しています(図2)。また、フィリップス社のアンケート調査では、24時間アクセス可能なAEDを取りに行って戻ってくるまでの時間が5分以上かかる割合が68%でした。これらの背景を踏まえると、個人宅や人口が密集した集合住宅では、AED設置の効果が特に期待されており、救助を行う同居人がいる状況下であれば、家庭用AEDの設置は有効と考えられます。今後も高齢化が進む日本で、身近な人の命を自分たちで守るためにも、一番リスクが高い住宅に設置をしておくことは重要です。

 

 

誰しもが突然に心停止をきたす可能性がありますが、心筋症、心筋梗塞、不整脈などの既往がある方は、特にそのリスクが高まります。心停止リスクの高い方は、植込型除細動器、着用型自動除細動器等の対策もありますが、全ての方が適応となるわけではありません。心疾患患者さんやその家族に、心肺蘇生法やAEDについて学んでいただくことは非常に大切です。リスク高い人と家族に向けた教育を充実させることが最大の予防につながります。

 

AEDは非常にシンプルな作りとなっております。医療従事者でなくても、AEDから流れるガイダンスに従い操作を行えば、適切な除細動を行うことができます。とは言っても、いざその場面に遭遇すれば平常心でいられないものです。

 

家庭用AEDを必要とする方に大切なことは、

① 対象者を一人にしない

② AEDをいつも携帯する

③ 家族がAEDと心肺蘇生の定期講習を欠かせない

です。

 

大学生の頃に、教科書に高山守正先生の名前がありました。母校の先輩であり、PTSMA、ASD閉鎖術、TAVIといった先進医療を日本で広めてきた第一人者です。今回、家庭用AEDの記事でインタビューを受けられており、拝読しました。まだまだ第一線でご活躍されていることを知り、嬉しく思いました。

 

心室性不整脈の既往がある方はICD (植え込み型除細動器)の適応となりますが、既往のない方でも、心筋症や心筋梗塞後など不整脈リスクの高い方はいらっしゃいます。家庭用AEDの記事を読まれて、興味を持たれたり、気になる方がいらっしゃいましたら当クリニックまでお気軽にご相談ください。

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