心臓の健康をその場で診断!院内でNT-proBNPの測定が可能になりました!
当院では、心不全マーカーであるNT-proBNPの院内測定を開始しました。これにより、心不全の診断を迅速かつ正確に行えるようになりました。
Roche社のlumiraDx
心不全とは
心不全とは、「心臓の機能低下により、息切れやむくみが起こり、進行することで寿命を縮める疾患」です。その原因は患者ごとに異なりますが、血液検査、胸部X線検査、心電図、心エコー検査などで診断が可能です。
SGLT2阻害薬の有効性を検証した論文がAmerican Journal of Cardiologyに掲載
最近、広島総合病院および尾道総合病院との多施設共同研究による論文が、American Journal of Cardiologyにアクセプトされました。本研究では、75歳以上の高齢患者を対象に、急性非代償性心不全に対するSGLT2阻害薬の有効性を検証しました。
ROSE-HF study (ストーンローゼスから頂戴しました)
SGLT2阻害薬は慢性心不全の治療薬として適応がありますが、急性期にも使用されることが多いのが現状です。本研究では、従来の薬物治療群とSGLT2阻害薬を追加した群を比較し、心血管死または心不全再入院の複合イベントを評価しました。その結果、過去の大規模臨床研究と同様に、高齢患者においてもSGLT2阻害薬の有効性が確認されました。
さらに、平均24か月の追跡期間における心不全による再入院回数も評価しました。心不全は寛解と増悪を繰り返す疾患であり、再発防止が重要です。本研究では、SGLT2阻害薬群が従来治療群と比較して再入院率を抑制し、入院頻度も減少させることが示されました。具体的には、追跡期間中の再入院を回避した割合はSGLT2阻害薬群で79.4%に対し、従来治療群で68.4%でした。また、年間の心不全再入院回数も有意に減少しました。
1年あたりの再入院回数
縦軸:年間の入院回数、横軸:患者さんの数 (N)
近年、GLP-1受容体作動薬の心疾患への好影響にも注目していますが、高齢患者では食欲低下の副作用により投与を躊躇する場合があります。一方、SGLT2阻害薬は安全性が十分に担保されており、高齢患者にとって有用な治療選択肢と考えています。
NT-proBNP測定による心不全診断の迅速化
心不全の診断では、身体所見、聴診、心電図、心エコー検査などを行いますが、血液検査によるNT-proBNP測定はシンプルかつ明確な診断ツールです。これまで外注検査だったNT-proBNPが、Roche社のLumiraDxを用いることで院内で迅速に測定可能となりました。これにより、従来の検査データに加えてNT-proBNPの結果を基に薬物調整を行い、より的確な治療が可能になりました。検査時間は約12分で、心不全の重症度評価や患者への説明に役立つ信頼性の高い指標です。(NT-proBNPの詳細につきましてはこちらをご参照ください)
イメージ写真 (当院では静脈血を使用しています)
この機器では、NT-proBNPの他に、HbA1cやCRP等も測定可能です。
当院では、豊富な経験と臨床データに基づき、心不全診療に取り組んでいます。気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください!