Oasis Live ‘25 〜Tokyo Vibes In The Area〜
無事にオアシスの日本公演が終わりました。余韻に浸りながら、まだ現実に戻って来られない日々を過ごしています。
この25年間、イギリスでオアシスを観ることが人生の一つの目標でした。8月にウェンブリーで彼らを見るという大きな目標を達成しましたので、今回の東京公演は「おまけ」くらいに思っていたのですが、大きな誤りでした。10月25日と26日に東京ドームで行われたライブは、本国に勝るとも劣らない素晴らしいものでした。彼らの日本愛は本物で、深く感動しました。
Two of a kind !!
リアムとノエルの関係性はこれまでと比べものにならないほど良好な状態を維持しています。この先も続くでしょう。今回のツアーは、我々の想像もつかない規模での経済効果をもたらし、かつてのようなインディロックバンドらしさは消えてしまったかもしれません。解散後16年の間に、とてつもない数のファンを獲得し、格段に需要が増えました。東京の街を歩けば、オアシスのTシャツやグッズを身につけた無数のファンに遭遇しました。東京ドームに入ることができなくても会場外で肩を組んで大声で合唱する光景をテレビで見た時には、深く感動しました。会場内には、私よりはるかに若い20-30代のファンが大多数でした。これほどまでに聴き継がれていくとは、2000年代には想像もつきませんでした。
東京ドームはほぼ初心者のため、正面に掲げられた「Our Giants Will Live Forever」の文字が、オアシスのものかと誤解してしまいました。妙にシンクロしてニヤつきが止まりません。彼らはあまりにも大きくなりすぎて、近づき難いほどの存在感を発しています。
雨の東京ドームにオアシスのバイブスあり!
「This Is Not A Drill」(これは訓練ではない)のアナウンスとともに「Fuckin’ In The Bushes」がかかり、メンバーが登場します。ギャラガー兄弟が抱き合う姿が恒例となっていますが、何度見ても感動的なものです。
「Hello」から会場全体のボルテージは最高潮に。鬼のように盛り上がる観客の歓声と大合唱に、思わず涙がこぼれます。本国イギリスにまったく引けをとりません。曲の終わりにはリアムの「Arigato!!」が炸裂しました。続く「Acquiesce」の盛り上がりは尋常ではありませんでした。サビの「Because We Need Each Other〜」は信じられないほどの大合唱です。ノエルが歌う中、リアムはタンバリンを加えて仁王立ち、観客の大合唱を肌で感じている様子でした。そしてその後も「Arigato!!」と連発していました。笑
ツアーも終盤にさしかかり少し余裕が出てきたのか、リアムもノエルも終始ご機嫌でリラックスした雰囲気が感じられました。オアシスとして第二の故郷である日本に再び帰って来れたことを噛み締めているようにも感じられました。
Oasis Vibes In The Area (Shibuya) !!
今回は精神的に余裕がありましたので、会場全体を見渡して観客の様子を伺ったり、各パートの演奏に耳を傾けたりしながら楽しみました。それにしても音響/演出が良かったのですが、The Back Hornの岡峰さんが詳細に解説していました。メインスピーカーとディレイスピーカーを用いて緻密に計算された音響と余りあるスピーカー数で会場全体に迫力のある音を届けています。さらに、ステージ後方の巨大なスクリーンが、ほとんど動きのない彼らを大きく映し出すことで後方の観客にまで彼らの表情や動きがわかるように重要な役割を果たしていました。
今回のツアーは、初期からのファンや新たに獲得した若い世代を意識したオアシスのベスト的なセットリストとなっています。全てのベニューで同じセットリスト、ギャラガー兄弟が抱き合ったり、リアムが途中でフードやハットを被るのは、今回のツアーを通じて世界中の人々が同じ事を体験できるようにとの彼らの計らいでしょう。
それにしてもリアムのかっこよさといったら言葉になりません。いつものガニ股姿で歌い、MCは最小限のみ、曲間では仁王立ち、時々マラカスとタンバリンを振っているだけなのに比類なきオーラを放ち続けるのは何故でしょう?それは彼のアティテュードにあるのでしょう。労働階級出身であることに偽らず、ブレることなくマンチェスター訛りでしゃべる彼の生き様に憧れ続けます。そう、彼は正真正銘のロックンロールスター。私のアイドルは、27年間今も変わらずリアム・ギャラガーです。
今回の再結成ツアーについて、「Noel Divorce Tour」と揶揄されたこともありましたが、ビジネス的な理由だけでは説明がつかず、お互いをリスペクトしているからこそ叶ったものだと思います。2009年の解散後、彼らは別々の道を歩みました。リアムは口ではノエルに悪態付いていましたが、本音はもう一度やり直したいという未練に溢れていました。Beady Eyeで発表した2枚のアルバムは、どちらも魅力に溢れていましたし、ソロ名義でリリースされたアルバムも素晴らしい佳作ばかりです(特に2017年のAs You Wereは良作!)。2024年に元The Stone Rosesのジョン・スクワイアとのコラボ作を聴いた時は、もうオアシスの再結成なんて叶わなくて良いと思わせてくれるほどの出来栄えでした。
一方、Noel Gallagher’s High Flying Birdsはノエルのソロプロジェクトですが、正直あまり惹かれるものは見当たりませんでした。強いて言えば「Who Build The Moon?」くらいでしょうか。「Dig Out Your Soul」以降のノエルは、その時々の趣向が前面に出ていましたが、やはりリアムの声がなくしてはオアシス期ほどの魅力と感じることはありませんでした。そんな2人がもう一度同じ場所に戻ってきたのですから、これほど嬉しいことはありません!
「Whatever」のバックスクリーンはジャケット写真をモチーフにしていますが、この景色がどうしても見たくて、数年前に遥々シェフィールドの山奥へ行ってきました。高低差が100mくらいある丘陵地形で、撮影場所がどこなのか探し回りましたが、近い景色を見つけました。あの時の光景を思い出しながら聴く「Whatever」は感動もひとしおでした。
夢にまでみた景色に感動!
アンコールはまさに圧巻です。「The Masterplan」の大合唱から怒涛の「Don’t Look Back In Anger」です。本当に大合唱でした。ノエルが「一緒に歌います」と日本語で言っていたのですね、あとで知りました!最後の「But don’t look back in anger」のリピートが、ここ日本だけ短かった理由を知りたいです。続く「Wonderwall」の盛り上がりも負けていません。私も大声で合唱しました。この一体感こそが、オアシスがオアシスたる所以です。
最後の「Champagne Supernova」は、人生のハイライトでした。デビュー時の天使のようなリアムの声は、酒とタバコとドラッグに溺れ、消え去りました。解散後は、人生のどん底を経験し、橋本病を患い、キャリアの終焉の危機もありました。そんな中、最愛の人デビーと出会い、リアムの人生は一転しました。リアムにとって、オアシス再結成にも大きく貢献したデビーがどれほど大きな存在であるか想像に難くありません。紆余曲折を経て復活したリアムの声は、この曲を次のレベルへと押し上げています。目を閉じて、音にだけ集中し、自分の人生を思い浮かべながら全てを曲に委ねて酔いしれました。これほど贅沢な時間を過ごしたことはありません。至福の瞬間とはまさにこのことです。
最後に、敬愛する岸田くんのブログに感動したので一部抜粋します。
私は色んな音楽を愛しているが、ロックンロールに夢を持っている。ロックンロールは、測りで計るものではない。声にならない声や、名前のつけられない気持ちを持ったどんな人にも、平等に降り注ぐ雨のような、少し切ないけどワクワクする音楽のことだ。
ロックンロールを演奏するロックバンドは、誰よりも美しい。ギャラガー兄弟は、少しおじさんになって帰ってきた。私も、少しおじさんになって、少しの諦念のようなものを感じながら、柔らかい気持ちで彼らのニューアルバムを待っている。
くるりほどストイックに音楽を追求しているバンドを他に知りません。そんな岸田くんに執念を感じさせ、二枚目のアルバムを聴き続けさせたオアシスは、やはり偉大なバンドだと痛感させられました。そして私も、再結成の発表があった瞬間からニューアルバムを期待してきました。今の彼らがどんな音楽を作るのか、否応にも期待してしまいます。
「Wonderwall」ノエル直筆の歌詞 (神保町 かわまつにて)
それが、27年間毎日欠かさずに彼らの音楽を聴き続けてきたファンの声です。
リアム、ノエル、待ってたぜ!
