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長時間持続する冠攣縮性狭心症の一例

[2024.12.25]

今年も残すところあと1週間を切りました。外来に来られる患者さんは、皆さん口を揃えて、「今年は本当に早かった。まだその実感がない」と言われます。私自身も全く同感です。大掃除にはまだ手が届かず、果たして新年までに間に合うでしょうか。

 

この季節、循環器内科は急患が増加します。先日総合病院へアブレーションのお手伝いへ行った際、人手が足りないくらい忙しい状況だったので、緊急カテーテル検査に入りました。

 

40代男性の方で、先日夜間から持続した胸痛があり、来院時には軽減するも、まだ痛みが残存していました。心電図では、前胸部誘導のR波は減高し、陰性T波が目立ちました。経過と併せて、心筋梗塞後の再灌流が得られた状態と考えられました。

 

来院時の心電図

 

冠動脈造影では、予想通り左前下行枝 #7に高度狭窄が見られました。通常通り治療に向けて、血管内超音波 (IVUS)で病変部を確認しましたが、心筋梗塞や狭心症に特徴的なプラークの付着や破綻した所見はなく、血管壁が均一に細くなっていました。

 

左前下行枝に高度狭窄

 

血管内超音波での病変部 (血管壁の均一なshirink)

 

これは冠攣縮ではないかと判断し、ニトロール (血管拡張薬)を投与したところ、血管の拡張が得られました。血管内超音波で再度確認したところ、前後の血管と同じように動脈硬化の少ない綺麗な血管になり、手技を終えました。

 

ニトロール (血管拡張薬)投与後は著明に拡張

 

血管内超音波ではどこに病変があったか分からないほど良好に拡張

 

冠攣縮性狭心症は、日常の診療でもよくみる疾患ではありますが、このように何時間も持続し心筋梗塞に至るケースは稀です。この方は以前に喫煙歴がありますが、現在は喫煙なく、生活習慣病の既往もありませんでした (来院時の検査で軽度のLDL高値のみ) 。冠拡張薬の定期内服を開始し、退院となりました。

 

冠攣縮性狭心症 (Vasospastic angina)は、冬季に発症しやすいことが報告されています。寒冷刺激が冠動脈の収縮を引き起こす可能性があるためです。寒冷環境では、交感神経が活発になり、血管収縮が誘発されやすくなります。また、夜間から早朝にかけて発作が起きやすいことも知られています。これは、夜間の副交感神経優位の状態が血管の調節に影響を与えるためと考えられています。

 

冠攣縮と動脈硬化性 (アテローム性)の違い

 

誘引する因子として、喫煙、ストレス、生活習慣病、薬物、アレルギー体質などが挙げられます。冠攣縮狭心症の特徴として、いわゆる狭心症と異なり動脈硬化性変化は乏しいですが、少なからず脂の付着した血管に起きやすいです。ヒートショックも然りですが、寒冷環境には注意が必要です。過度の飲酒やストレスも誘引となります。

 

冠攣縮性狭心症は、夜間から早朝にかけて起こる安静時胸痛で、通常は数分程度で治ることが特徴です。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

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