乳製品と死亡リスク減少に関する論文
寒さが身に染みる季節となりました。ミルクのたっぷり入ったホットコーヒーが恋しくなります。健康に気を配りながら、毎日を元気に過ごしたいものです。
牛乳など乳製品にはカルシウムを含む様々な栄養素があり、骨の健康をサポートするなどの効果がありますが、同時に脂肪が多いことやアレルギーを引き起こすなどのデメリットもあり、健康に対する良し悪しについては様々な議論があります。そんな中、慶應義塾大学の研究グループが興味深い論文を発表されていたのでお示ししたいと思います。
日本人における乳製品摂取と死亡リスクとの関連を12年間追跡調査した結果、男女ともにヨーグルトの摂取量が多いほど全死亡リスクが低く、女性ではさらに乳製品全般および牛乳摂取と全死因死亡リスク、牛乳摂取とがん死亡リスク、ヨーグルト摂取と心血管疾患(CVD)死亡リスクの低下が関連していました。
研究概要
- 対象者: 日本の79,000人以上の男女(40~69歳)
- 期間: 平均12年間の追跡調査
- 目的: 乳製品摂取量(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)と死亡リスク(全死因、がん、心血管疾患)の関連性を評価
- 方法: 食事頻度調査票(FFQ)を用いて乳製品の摂取量を評価し、摂取量を3つのカテゴリ(低、中、高)に分類
主な結果は以下のとおりです。
・乳製品総摂取量の中央値は、男性が34.6g/1,000kcal (66.0g/日)、女性が79.7g/1,000kcal (127.5g/日)。
・追跡期間中央値12.4年で、期間中3,723例が死亡し、そのうちがんによる死亡が2,088例、心血管疾患による死亡が530例。
・男性では、ヨーグルトの摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群よりも全死因死亡リスクが低い結果でした(HR:0.90、95%CI:0.82~0.999、P=0.034)。
・女性では、乳製品の総摂取量と全死因死亡リスク、牛乳摂取量と全死因死亡リスクおよびがん死亡リスク、ヨーグルト摂取量と全死因死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスクとの間にも逆相関が観察されました。
これらの結果より、研究グループは「女性の乳製品全般と牛乳の摂取量の多さ、および男女のヨーグルト摂取量の多さは、12年間の追跡調査において全死因死亡リスクの低下と関連していた。本研究は、少なくとも日本人が日常的に摂取している程度の乳製品の摂取は、健康的な食生活の品目としての推奨と矛盾しないことを示唆している」と総括しています。
実臨床研究あるあるですが、研究の限界点として、他のライフスタイル要因(運動、健康意識)の影響が完全には排除できないことが挙げられます。乳製品を定期的に摂取する人は、健康意識が高く、その他のリスク因子もコントロールが良い可能性があります。しかし、それでもなおこの研究は日本人において乳製品摂取が全死因および心血管疾患死亡リスクの低下に寄与する可能性を十分に示していると考えられます。
私自身、食事量やバランス、運動を日常的に心がけていますが、乳製品の摂取は極端に少なかったことを痛感させられました。論文を読んだその日から早速ヨーグルトやチーズを摂るようになりました。(笑)
乳製品は、肌が荒れる、胃腸の調子が悪くなる、ホルモンバランスに影響し精神的に不安定になるなどのデメリットはありますが、過度な摂取を控えれば大きな問題とならないことがほとんどだと思います。さまざまな栄養素のバランスがとれた食事を心がけたいものです。
引用元:Miyagawa N, Takashima N, Harada A, et al. Dairy Intake and All-Cause, Cancer, and Cardiovascular Disease Mortality Risk in A Large Japanese Population: A 12-Year Follow-Up of the J-MICC Study; J Atheroscler Thromb, 2024.