メニュー

花粉症の薬をどう選ぶ? 〜花粉症薬の使い分けについて〜

[2025.02.18]

先週あたりから、目や鼻に違和感を感じ始めました。止めどなく流れ出る鼻汁、鼻をかみすぎてもう痛いです。残念ながら、今年も花粉症の季節が来ました。外来通院されている患者さんから同様の声を聞くようになり実感しています。花粉症をお持ちの方にしか分からない悩みですが、なかなか辛いものです。

2025年の花粉症シーズンは、スギ・ヒノキの花粉飛散量が前年より増加する地域が多いと予測されています。特に九州から近畿にかけては、昨シーズン (2024年)と比べて非常に多くなる見込みとのことです。 聞くだけでため息が出ます、はあー…

本日は花粉症に用いる薬剤についてお話しいたします。

 

 

花粉症の症状を軽減するためには、適切な抗アレルギー薬の選択と使用が重要です。アレルギー性鼻炎に対する主な薬剤は以下の通りです。

 

▼ 抗ヒスタミン薬

アレルギー反応で放出されるヒスタミンの作用を抑制し、くしゃみ、鼻水、かゆみなどの症状を緩和します。抗アレルギー薬の代表で、どこのクリニックでも第1選択で処方されることが多いと思います。特に第2世代抗ヒスタミン薬は、眠気を引き起こしにくく、日常生活への影響が少ないため、広く使用されています。 

  1. 第一世代抗ヒスタミン薬

第一世代の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体をブロックすることで症状を緩和しますが、同時に中枢神経にも作用し、眠気や注意力の低下などの副作用を引き起こすことがあります。そのため、運転や集中を必要とする作業には不向きです。これらの薬剤が使用されるケースは限られているのが現状です。

  • 代表的な薬剤
    • ジフェンヒドラミン塩酸塩(商品名:レスタミン)
    • ヒドロキシジンパモ酸塩(商品名:アタラックス)
  • 特徴と使い分け
    • 利点:即効性があり、強い抗ヒスタミン作用を発揮します。鼻水や目のかゆみに対して効果的です。
    • 欠点:眠気や口の渇き、便秘、視力障害などが出やすく、仕事や勉強に支障をきたすことがあります。

 

  1. 第二世代抗ヒスタミン薬

第二世代抗ヒスタミン薬は、第一世代薬の副作用(特に眠気)を大幅に減らし、長時間作用するものが多いため、日常生活に支障をきたしにくいです。第二世代薬は、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状に効果があり、花粉症においては主にこちらが第一選択薬として使用されます。

  • 代表的な薬剤
    • エピナスチン(商品名:アレジオン)
    • セチリジン(商品名:ジルテック)
    • ベポタスチン(商品名:タリオン)(1日2回)
    • フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)(1日2回)
    • オロパタジン(商品名:アレロック)
    • ロラタジン(商品名:クラリチン)
    • レポセチリジン(商品名:ザイザル)(1日1回 就寝前)
    • ビラスチン(商品名:ビラノア)(空腹時でないと効果半減)
    • デスロタラジン(商品名:デザレックス)
    • ルパタジン(商品名:ルパフィン)

 

  • 特徴と使い分け (文献データより、個人差はあります)
    • 効果:強→ビラノア、アレロック、ルパフィン、ザイザル
    • 眠気:少→ビラノア、アレグラ、デザレックス、クラリチン
    • 眠気:強→アレロック、ザイザル、ジルテック、ルパフィン

 

抗ヒスタミン薬の効果と眠気の比較 (薬剤の構造ごとに色分け)

(比較はあくまで参考で、効果には個人差があります)

 

  1. 使い分け

抗ヒスタミン薬の選択は、以下のポイントを考慮して行います:

  • 日中に活動することが多い場合:第二世代抗ヒスタミン薬を第一選択とすることが一般的です。これらは眠気が少なく、長時間の効果が期待できるため、花粉症シーズン中も日常生活に支障をきたしません。
  • 第二世代薬の中でも、ビラノア、アレグラ、デザレックスは特に脳内移行性が低く、自動車運転にも禁止・注意の記載がありません。運転される機会の多い方には、これらの薬剤が良いかもしれません。
  • ルパフィンは2017年に発売され、比較的新しい薬剤ですが、比較的眠気の副作用が強い薬剤です。服用後1時間程度で最大血中濃度に達します。1日1回の服用で、寝る前に内服することが勧められます。食後に内服した場合は、最大濃度に達するのが1時間程度遅れると言われています。

 

  1. 注意点

抗ヒスタミン薬を使用する際は、以下の点に注意が必要です:

  • 運転や重機操作:眠気が出やすい場合、運転や機械の操作を避けるべきです。仕事の内容や日常生活のパターンに応じて、薬剤選択を行うことが重要です。
  • 長期使用:第一世代薬を長期にわたって使用すると、耐性がついたり、副作用が強くなることがあるため、注意が必要です。
  • 併用薬の確認:他の薬剤(特に鎮静剤や抗うつ薬など)との併用により、副作用が強くなることがあるので、使用前に医師に相談することをお勧めします。

 

 

▼ 抗ロイコトリエン薬

ロイコトリエンはアレルギー反応で生成される物質で、これを抑制することで症状を軽減します。鼻閉(鼻づまり)を伴う症状に効果的とされています。他に 気管支拡張作用を有しますので、気管支喘息に用いられます。

  • 代表的な薬剤
    • プランルカスト(商品名:オノン)
    • モンテルカスト(商品名:キプレス、シングレア)

 

  • 血管収縮薬と抗ヒスタミン薬の合剤

鼻閉を伴う症状に対して、血管収縮薬と抗ヒスタミン薬を組み合わせた薬剤が使用されることがあります。ディレグラは、「フェキソフェナジン」(アレグラ)と「プソイドエフェドリン」の2つの成分を含みます。プソイドエフェドリンは、「α交感神経刺激薬」とよばれるタイプのお薬で、鼻づまりに対して効果があります。交感神経を刺激する作用があり、鼻の粘膜にあるα(アルファ)受容体を刺激することで、血管を収縮させ、粘膜の充血や腫れを抑えることにより、鼻づまりを解消する効果をもちます。鼻閉症状の強い方が、症状の強い期間のみに限局して用いる薬剤のため原則処方は2週間です。長期使用は避けるべき薬剤です。

 

▼ 点鼻薬

鼻の炎症を抑える効果が高く、鼻づまりや鼻水に有効です。点鼻薬は局所的に作用するため、全身的な副作用が少ないとされています。 抗ヒスタミン薬の内服と併用することで、相乗的に症状の軽減が期待できます。

  • 薬剤
    • ステロイド:ナゾネックス (くしゃみ・鼻水・鼻詰まりに効果的)
    • 抗ヒスタミン薬:リボスチン(突発的なくしゃみや鼻水に)

 

▼ セレスタミン配合錠

蕁麻疹など短期間で投与して、かゆみを伴うアレルギー症状を速やかに抑えたい時に処方します。また花粉症やアレルギー性鼻炎に使用する時もありますが、長期投与にはリスクを伴い、勧められません。セレスタミンに配合されているのは「d-クロルフェニラミンマレイン酸塩」と呼ばれる抗ヒスタミン薬と「ベタメタゾン」と呼ばれるステロイドです。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの働きを抑えるので、かゆみなどのアレルギー症状に有効です。そしてステロイドが炎症を鎮めます。セレスタミンはこの2種類の成分の作用によってアレルギー反応に対して強力に作用します。

長期的に投与するリスクは、そのステロイド成分にあります。誰しも生理的に内因性のステロイド~コルチゾール(ヒドロコルチゾン)を毎日副腎から分泌しています。セレスタミンは、人工的に合成したステロイドを体外から補って、抗アレルギー作用を発揮するイメージです。ステロイドは体になくてはならない必要物質ですが、様々な副作用を有します。セレスタミン配合錠1錠は、プレドニン5mg錠の半錠 (2.5mg)に相当します。仮にセレスタミンを1日3錠を内服すれば、プレドニン換算では7.5mg/日となります。この容量を内服し続けるのは非常にリスクがあります。ステロイドの副作用は様々ですが、セレスタミンの長期内服にて糖尿病の発症に至るケースがありお勧めできません。私自身、時々使用することはありますが、限定的に使用するよう心がけております。効果はありますが、副作用に注意がいる薬剤で、正に諸刃の刃です。

 

▼ 漢方薬 (小青竜湯)

薬にあまり頼りたくない、効果の強い薬は避けたいという方には漢方をお勧めします。小青竜湯は、「水(すい)」によって冷えた体の部分を温めながら水分代謝を促すとともに、「気(き)」を動かして、鼻水・くしゃみなどの鼻症状を抑える作用がある漢方薬です。眠くなる成分が入っていないので、仕事や学校で眠くなりたくない方にも適しています。

水のような鼻水や痰、くしゃみ、鼻づまり、咳などの症状があるとき、かぜやアレルギー性鼻炎などのときに処方されます。また、花粉症の治療にも使われているほか、鼻炎、気管支炎、気管支喘息にも用いられます。

 

まとめ

薬剤の選択や使用方法については、個々の症状や体質に応じて医師と相談することが重要です。また、花粉症シーズンが始まる前に予防的な治療を開始することで、症状の発症を抑える効果が期待できます。

花粉症の薬は上記のように多種多様です。一般的な効果をご説明しましたが、薬の効き具合には個人差があります。花粉症でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください!

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME