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2025年2月の1枚 (Marianne Faithfull)

[2025.02.12]

Marianne Faithfull / Marianne Faithfull (1965)

 

先日マリアンヌフェイスフルの訃報を知りました。享年78歳。彼女の死は多くの人に悲しみを与えました。日本での知名度はあまり高くありませんが、「ルパン三世」の峰不二子のモデルと言えば少しイメージできるでしょうか。彼女の人生は、私の知る限りとても壮絶なものでした。60年代の成功とスキャンダル、70年代の転落とホームレス生活、79年 ”Broken English” での復活、その後に音楽と文学の融合を果たしました。まさに波乱万丈で、その音楽も波乱と共鳴するような形で変化を遂げました。本日は、彼女の初期の名作 “Marianne Faithfull”を取り上げたいと思います。

 

マリアンヌの可憐な美しさが光るUK盤カバージャケット

 

ファーストアルバム ”Marianne Faithfull”は、1965年にリリースされた彼女の出発点です。当時18歳の彼女は、清らかで澄んだ歌声と、英国フォークとポップスを融合させた独特のスタイルで注目を集めました。私は大学時代に初めて聴きましたが、彼女の透明感の満ちた誠実な歌声に魅了されました。「声量は乏しく線は細いが、時代を超えた美しさを持っている」と直感的に感じました。このアルバムは、彼女の初期のキャリアを形作る作品で、彼女が持っていた潜在的な才能を世に知らしめる重要な作品でもありました。

 

スウィンギングロンドンを象徴するスタイルアイコン

 


彼女の音楽に言及する際に、ローリングストーンズとの関係について触れないわけにはいきません。このアルバムには、ミックジャガーとキースリチャーズが共作した名曲 ”As Tears Go By”が収められています。繊細なストリングスのアレンジと彼女の澄んだボーカルが特徴で、青春の儚さと孤独を描き出しています。彼女の声は、まるで夢のように優しく、楽曲のメランコリックな雰囲気を際立たせています。後にストーンズ自身もカバーしていますが、マリアンヌのこの曲は、彼女の純真さと繊細さを象徴するものとして評価されています。

 

美しきUK Decca Mono盤

 

ジャッキーデシャノン、バートバカラックやビートルズのカバーなど多彩な楽曲が収録されています。アルバム全体を通して、マリアンヌの歌声は、当時の若者の感情や社会の雰囲気を巧みに表現しています。彼女の歌唱は、技術的な精度よりも、感情の表出や物語性を重視しており、その点が多くのリスナーに共感を呼び起こしました。

 

ローリングストーンズのミューズだったマリアンヌ (右は恋人のミックジャガー)

 

ミックジャガーとの破局後、マリアンヌはドラッグ依存に苦しみ、一時はホームレス生活を送るまでに落ちぶれました。彼女の声は次第にハスキーになり、初期の透明感のある歌声は影を潜めていきました。まさにどん底まで落ちましたが、1979年名作 ”Broken English”で復活を遂げます。彼女の歌声はかつての澄んだものではなく、喫煙とドラッグの影響で荒々しく、低く、深みを増していました。このアルバムはパンクやニューウェーブの影響を受けた暗く鋭い作品となりました。これにより彼女は「ただの美少女シンガー」ではなく、表現力豊かなアーティストとしての地位を確立したのです。

 

同じ写真なのに印象の異なるUS盤のカバージャケット

 

彼女の訃報に大変ショックを受けましたが、マリアンヌの音楽はこれからも多くの人々の心に宿り、聴き継がれることでしょう。

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