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2025年1月の1枚 (The Clash)

[2025.01.05]

The Clash / The Clash (1977)

 

2025年を迎えました。「今年も良い年になりますように」と願う今日この頃です。今年初めの1枚は、クラッシュのファーストアルバムを取り上げたいと思います。経済的低迷が著しく先が見えない昨今、移民問題は深刻化し、日本社会の根底を覆しかねない様々な問題が浮き彫りとなっています。まるで彼らの生きていた70年代後半と似ています。

 

ジャケットはドラムスのテリーチャイムズ脱退後のため三人のみ

 

クラッシュはピストルズ、ダムドと並んで、英国パンクロックを代表するバンドです。かつて某車会社のCMで”I Fought The Low”が流れていた時期があり、耳にしたことのある方も多いかもしれません。パンクと聞くと何だか危険なものと感じるかもしれませんが、それは大きな誤解です。彼らいわゆる初期パンクは、1970年代後半に発生した音楽的・文化的革命で、社会的な反逆精神、エネルギッシュな音楽性、DIY (Do It Yourself) 精神に満ち溢れています。

 

この作品は、1970年代後半の英国社会の混乱を反映し、景気後退と失業率の増加、人種差別や警察暴力といった社会問題が若者たちの不満を煽り、パンクロックの怒りの原動力となりました。バンドはDIY精神に則り、限られた予算と短期間でアルバムを完成させました (資金などろくにありませんでした)。この過程は、当時のパンクの美学である「シンプルで生々しい表現」を体現しています。プロデューサーのミッキー・フットの指揮の下、荒削りでエネルギッシュなサウンドが意図的に強調され、バンドの即興的なスタイルを捉えることに成功しています。一曲目の”Janie Jones”から疾走感に満ちて縦ノリ全開です。

 

時代が映し出された裏ジャケ

 

彼らはまた、曲と歌詞の中で人種的多様性とその連帯感の両方を兼ね備えます。当時、ロンドンの労働者階級地区は移民問題や人種間の緊張が高まっており、バンドはその現実から目を逸らさず、音楽の中に取り込むことで社会批判を強めました。中でも”White Riot”や”Career Opportunities”は、労働者階級の怒りや疎外感を代弁しています。ボロボロでスカスカな演奏が本当にカッコいい!

 

クラッシュはピストルズなど他の初期パンクと比べ、音楽的素養がありました。パンクの攻撃性に加えて、レゲエやロックステディなどの黒人音楽からの影響が顕著で、”Police & Thieves”はその典型です。異種混交的な音楽アプローチは、後の大傑作アルバム ”The London Calling”や”Sandinista”を産み出す原動力となり、クラッシュが凡百のパンクバンドと一線を画する裏付けでもあります。

 

7インチ盤 "White Riot" !

 

”The Clash”は、リリース当初からパンクロックの傑作とされ、多くの若者に影響を与えました。その影響は単に音楽的なものにとどまらず、文化や政治、社会運動にも及びました。映画「白い暴動」を観れば、彼らが生きていた時代とそのリアルな姿を知ることができます。クラッシュは、「パンクはただの音楽ではなく、態度であり、行動である」という信念を持ち、音楽を通じて社会変革を目指しました。このアルバムは、その精神を最も純粋に表現した作品です。1970年代の英国社会の鏡であり、同時に未来への予見でもありました。その制作過程におけるDIY精神、社会的メッセージの力強さ、そして音楽的な実験精神は、このアルバムを「時代を超えた名盤」として位置付けています。クラッシュは、怒りと希望を同時に表現することで、音楽がどれほど強力な変革の手段となり得るかを証明したのです。

 

2025年の耳で一聴しただけでは、初期パンクの魅力に気付かないかもしれません。しかしクラッシュもピストルズもダムドも魅力に満ちたバンドです。後追いの私にとって彼らの音楽や生き様は、人生の教科書のようです。パンクの精神は普遍的で、反権威的な態度や真の自由を求める人々にとって、インスピレーションの源であり続けています。医者という立場を弁えながらもパンクの精神を忘れず、社会に貢献できるよう今年も突き進んでいきたいと思います。

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