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祝Oasis再結成 第2弾

[2024.10.06]

Oasis

Be Here Now (1997)

 

再結成が発表されてから、続々とツアーの日程が公表されています。オーストラリアの次は日本となるでしょう。本日は、最近聴きかえすことの多くなった、このアルバムについて書きたいと思います。

 

発売当時、友人にもらったカセットテープがオアシスとの出会いです。中学生だった私にとってオアシスは、まるでリアルタイムで体験したビートルズのようでした。まさか、人生を狂わされるほど彼らに夢中になるとは。

 

この“Be Here Now”は、オアシス初期3部作の最後を飾る大作です。過剰なリバーブのかかったバッキングギターで音の隙間を埋め、その中をリアムの声が浮遊する構図は、3作を通して一貫しています。オアシス版ウォールオブサウンドは、本作でより顕著になりました。

 

ロールスロイスのナンバープレートがアビーロードの車にそっくりです!

 

CDでは12曲で70分を超え、執拗に間延びしたアレンジが酷評の要因となっていますが、レコードでは4面に3曲ずつ配置されており、各面ごとに聴き込むには申し分のない長さです。溝にゆとりもあって音質的にも満足できます。

 

この頃の彼らは、初期衝動を喪失し円熟期を迎えていました。絶頂期の彼らが遠い過去のようにも感じます。レコーディング場所は、これまでのRockfield Studiosから、かの有名なAbbey Road Studiosへと移りました。それが何を意味しているのか?「もう俺たちはビートルズにも比肩しているんだ」と言わんばかりに、俯瞰した視点で奏でられる広大な世界観に、我々は戸惑いを感じたのは事実です。

 

前作2枚は完全無欠のマスターピースであっただけに、本作は評価が二分しています。しかし、耳を凝らして聴いてみてほしいです。曲自体はギターノイズで埋め尽くされてしまうほど荒々しいですが、その中で鳴り響くメロディは、オアシスの全作中、最もビートルズ寄りで美しいのです。そして何より、脂の乗り切ったリアムの声は神がかっています。

 

 

冒頭の”D’You Know What I Mean?”から凄まじい音像です。このアルバムの底知れないスケール感を表したナンバーで、オープニングに打って付けです。余裕すら感じ取れるダイナミックさ、英国ならではの哀愁感のあるメロディはどこを切ってもオアシスそのものです。

 

隠れた名曲と名高い”I Hope, I Think, I Know”は秀逸です。シューゲイザーのようなギターノイズとリアムの透き通った声という対極の音が、奇跡的なシンクロをみせます。同時期に”Stay Young”という曲がありますが、どちらも甲乙つけ難い名曲です。

 

重厚な曲が続いた後の”Don’t Go Away”に心温まります。ギャラガー兄弟の母である、ペギーの入院を契機に書かれた曲です。平生の悪行とは裏腹に、母への感謝や愛情に満ち溢れ、普遍的なラブソングへと昇華した名曲です。当時この曲を聴いて、リアムの声に心底惚れ込みました。

 

”All Around the World”でクライマックスを迎えた後の”It's Getting Better (Man!!)”は最高です。ミドルテンポロックにパンクとシューゲイザーが混在しています。狂気的なまでに重厚な音は、常軌を脱しています。激しい音だけでは盆百のバンドに埋もれるところですが、リアムギャラガーという稀代のボーカリストが曲のレベルを何倍にも押し上げます。どこまでも力強く、自信に満ち溢れた歌声です。その融合がとても心地よい。この感覚はオアシスに特有で、彼らにしか出せない魅力でもあります。

 

プロデューサーのオーウェンモリスが手放したテスト盤が手元にあります。通常盤と比べ、音の輪郭が非常にクリアで、鮮度が破格に高いです。その上さらに轟音ですから、圧倒されっぱなしです。これは次元が違います。プロデューサーでない私でも、これならゴーサインを出します。

マトリックス番号は、A 3-1-1、B〜D面が1-1-1で通常盤と異なります

 

オアシスは本当に稀有なバンドだと思います。英国の偉大な巨人たちのロック・イディオムを踏襲しつつも、完璧なまでに彼らの音に仕上げてしまいます。誰もが曲を口ずさみたくなるほどの普遍的な音楽性を兼ね備えたバンドはほとんどいません。その点では、ビートルズやクイーンさえも凌駕します。

「Working Class Hero」とは、彼らのための言葉かもしれません。オアシスを好きになって一周した頃に、もう一度聴き直すと、彼らをもっと好きになる。”Be Here Now”はそんなアルバムです。

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